説明資料 7
  
 日本の炭鉱はすでにそのすべてが閉山となってるが、かつては多くの事故が起こった。その一部が「炭鉱重大災害一覧」としてまとめられている。

 ここに示されている事故の中で、化学反応に関与するものはガス爆発と粉塵爆発である。

 ガス爆発は、石炭層から噴き出したメタンガスが空気と混ざり、生じた混合ガスに着火することにより起こる爆発である。説明資料3でも示したように、爆発範囲でのメタン濃度下限は5.0vol%である。資料とした書籍「全記録炭鉱」によると、最後にガス爆発が記録されている三菱南大夕張炭鉱では、出炭ノルマがきつく、当初はメタンガス検知器のアラームをメタンガス濃度が1.0vol%に設定していたようである。しかし、常にアラームが鳴り続けるので、その値を1.5vol%まで引き上げて運用していたある日、突如大量のメタンガスが噴き出して爆発に至ったとのことである。

 石炭は活性炭からも想像されるように、種々の化合物、もちろん有機化合物であるメタンに対しても大きな吸着量を持っている。植物性繊維などから石炭が生じる過程で発生したメタンが、地下の高圧下で石炭層に吸着されていた。そして、採掘により圧力条件が常圧にまで解放されたとき、吸着されていたメタンがメタンガスとして噴出した、と考えるのが妥当である。

 炭鉱でガス爆発が多発したのは、過去に多くのメタンガス爆発を繰り返しながらも、どこにメタンの高濃度吸着層があるかを見極める技術がなかった、というのが結果論だろう。どこにメタンを高濃度で含む炭層があるかはわからないが、その炭層に確率的に行き当たることが確かな時、その安全をどのように図っていくかの対処方法が未確立であったことが、炭鉱でのメタンガス爆発の原因であったと考えられる。三菱南大夕張炭鉱は1990年に閉山となった。

 粉塵爆発については、採掘時に、あるいは石炭搬出のためのトロッコが通過したときに巻き上げられる石炭の微粉に着火したことにより起こる。粉塵爆発についての説明は説明資料6にある。

 参考として、三井三池三川炭鉱炭塵爆発(Wikipedia)には次のように記されている。

昭和38年11月9日午後3時12分、三井鉱山三池鉱業所三川鉱(三川坑)第一斜坑の坑口から約1600メートル付近の斜坑で炭塵爆発が起きた。坑内で用いられていた石炭を満載したトロッコの連結が外れて火花を出しながら脱線、暴走し、これにより大量の炭塵がトロッコから坑内に蔓延した。この炭塵に引火爆発したのが原因である

  
 
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