説明資料 15
  
 東ソーの化学プラント爆発がなぜ起こったのかの説明である。問題の製造設備はスライド1の右図に示す蒸留設備である。

 まず、この蒸留塔に入る手前の工程では主反応と記した反応が行われる。エチレン(CH2=CH2)に塩素を付加させてジクロロエチレン(CLCH2CH2CL)とし、このジクロロエチレンを分解してクロロエチレン(CH2=CHCL、塩ビモノマー)と塩化水素を得る。得られたクロロエチレンと塩化水素が図の蒸留塔へと送られて蒸留される。

 蒸留の目的はクロロエチレンと塩化水素を分離することにある。常圧におけるクロロエチレンの沸点は-13℃、塩化水素の沸点は-85℃であり、この両者を共に高純度で得ようとした場合、塩化水素の凝縮に極低温を必要とする。この蒸留工程においては、まずは高純度のクロロエチレンが得られれば良いので、蒸留塔の下方からは高純度のクロロエチレンが流出する条件で蒸留塔は運転される。上部からはクロロエチレンと塩化水素の混合物がガス状態で流出し、この混合物は冷却されて液体となり、赤矢印で示したタンク(流出液貯留タンクと名付ける)に一旦貯められる。

 事故への第1ステップとして、この蒸留塔の前工程がトラブルにより緊急停止、それに伴い蒸留塔も緊急停止した。その結果として流出液貯留タンクの液面上昇が起こった。後の原因追及で、この流出液貯留タンクの内面上部には塩化鉄(FeCL3)が付着していたと結論され、この塩化鉄が触媒となって下に示した副反応を引き起こした。この副反応は最初はごくゆっくりと進行するものであったが、そののちに説明資料12に従ってその反応速度を増し、やがて流出液貯留タンクを爆発せしめるに至った。これが、爆発に至るストーリーである。

 なお、上でも示したようにクロロエチレンの沸点は-13℃であり、この温度で1気圧、これ以上の温度では高い圧力を示すことになる。塩化水素においてはさらに低い沸点(-85℃)であるので、この傾向はより顕著である。

 スライド2では、問題の副反応が発熱反応であることを計算により確認している。(g)はガス状態を示し、(l)は液状態を示す。

  
 
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