245. 空気清浄機プラスマクラスターイオンの正体は? 世間に風説を流布するものか?

 2010年 1月23日掲載  2014年 4月19日再掲


プラズマクラスターイオンなるものが大手を振って闊歩している。今までこの言葉を知らなかった私が無知なのかと思い、調べてみた。

その結果は、私の頭がますます混乱。なんと最先端科学の難しいことか。



エアカーテンと除菌技術で空気清浄する機器を新発売 2010年1月21日

同機の除菌・消臭の簡単なメカニズムは次の通り。同社が提携するシャープ株式会社のプラズマクラスターイオン(R)を放出し、空気中に浮遊するウイルスを抑制、アレル物質、カビ菌を分解・除去。二酸化塩素除菌剤が、空間、さらにテーブルなど付着したウイルス、細菌などに直接働き、除菌する。浮遊菌と付着菌に強いそれぞれの除菌効果をエアカーテンで効果的に室内に噴出することにより、大きな空間清浄効果が期待できる。



プラズマクラスターイオン(Wikipediaより) 相当する海外のWikipedia記事は皆無

プラズマクラスターイオンとは、マイナスイオンとプラスイオンをプラズマ放電する技術のことである[1]。家電メーカーシャープによる造語で、科学技術用語ではない。

概要 [編集]
マイナスイオンがブームになった時代に、シャープは同様に大気中の「イオン」に対して、特に自社のイオン発生器が生成するイオンをプラズマクラスターイオンと命名した。

シャープではプラズマクラスターイオンに除菌や脱臭の効果があるとしており、空気清浄機やエアコン、冷蔵庫などの分野において、イオン発生器を組み込んだ製品を展開している。

開発者による技報[2]によると除菌効果は、放電で同時に発生したオゾンによるものではなく、正イオンと負イオンの反応により生成した活性酸素(OHラジカルなど)のタンパク質変性作用がウイルスを不活性化するとしている。従い同社では「マイナスイオン」という用語ではなく、同社の特許技術[3]である「プラズマクラスター」というシャープの登録商標を使用している。この名称と技術を用いているのは2009年現在シャープのみである。

「除菌効果の実空間での実証」が開発者以外の第三者によってなされた科学論文は2007年現在のところ存在しない。同社は、広島大学、大阪市立大学、ハーバード大学、ソウル大学など国内外の複数機関で研究を行い効果を実証しているとしている[4]。新型H1N1インフルエンザウイルスに対しても2時間の照射で99.9%抑制するなどの効果を検証している[5]。



Wikipediaで示された文献[4] シャープのホームページ

プラズマクラスターの説明サイト



Wikipediaで示された文献[5] シャープのホームページ 2009年11月2日発表

■ プラズマクラスター技術の有害物質活動抑制効果実証一覧
※ それぞれどの程度の効果があったかの数値が示されていない。
※ 研究機関よりの論文発表が皆無である。



シャープ技報 第89号 2004年8月

放電プラズマにより生成したクラスターイオンを用いた室内浮遊アレルゲン失活技術
※ 自社の報告書に掲載しただけ
※ アレル物質と書いてないところが素晴らしい 
   当時はそのような都合のよい言葉が発明されていなかったのだろう



プラズマクラスターイオンに関するベストアンサー

マイナスイオンは大気科学関係の用語で,正式には「空気負イオン」,空気中の微細水滴などが負の電気を帯びたものを指します。化学用語ではありません。負の電荷を与えている陰イオン(←これは化学用語)が水滴中にあるはずですが,これははっきりとは特定されていません。

マイナスイオンを発生させるのは大別して放電を用いるものと水の破砕によるもの,放射線を用いるものがありますが,放電の場合はオゾン(活性酸素種ですね)が副産物として発生します。いずれにしてもマイナスイオン発生濃度は「プールに目薬1滴」くらいで,効果があると考える方が魔術的に不思議です。オゾンが発生する場合も,大した量は出ないでしょう。マイナスイオンetc.機能があってもなくても製品として変わらないと思っていいです。

「マイナスイオン」が断末魔状態なので,名前を変えて出してきているように思いますよ。



高校の先生のために書いたマイナスイオン

空気イオンは未科学である

 以上述べてきたように、空気イオンの存在は、100年前から確認されているとしても、その組成であるとか、生体への効果、さらには、その作用機構などについては、まだまだ未解明のことばかりである。その理由は、一つは余りにも微少であること、さらには、安定な化学種ではなくて、経時変化をするからである。すなわち、真空装置の中などで純粋なものを作っても、それが、大気中に放出されたときには、もはやどのような化学種になっているか分からない。
 となると、現代科学の最先端技術を使っても、恐らく、この物質の本質解明には相当苦労をするだろう。すなわち、未だ科学的解明は不十分であって、この物質が何か効果を示すと断言するのは難しい。
 広島大学の島田氏、高知高専の長門氏のように、純粋に物質の追及を行なう試みが、未科学が科学になる可能性を示している段階である。
 こんな未科学の物質であっても、最近の大メーカーは商品化してしまうのである。一体、誰を信用すべきなのか、恐ろしい時代になったものである。



生活衛生 53(4),239−246(2009) 

論文 プラズマクラスターイオンによる除菌作用の原理と応用
これが唯一の査読月論文といわれるが、タイトルの頭に「解説」と記されている。
※ 読んでいると疲れてくる。


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