212. スピード製鉄 その製鉄速度は従来の48倍 そしてCO2排出量は8割に低減とのすぐれもの

 2010年 1月 3日掲載  2014年 4月15日再掲


本日の日本経済新聞に「スピード製鉄」に関する記事があった。

このスピード製鉄は神戸製鋼所が15年をかけて編み出した方法で、従来の製鉄法に比べて、要する時間は48分の1、CO2の排出量は8割とすぐれものだ。今月にアメリカ・ミネソタで第1号機が動き出すとある。

さらに、6年前の情報を引用した。このときは、通常の製鉄時間が7時間、スピード製鉄が理論上は30分まで短くなると記されているので、この時には所要時間は約15分の1になると見積もられていた。ここ6年で、さらに大きく時間を短縮したことになる。

日本は技術立国である。この技術立国を成立させるためには、まったく新規な、”あっと”いう技術を生み出し続ける必要がある。戦後日本はアメリカの後追い、モノマネで工業技術の高度化を目指してきた。しかし、すでに日本国民も自覚しているように、モノマネでは生きていけなくなってきた。モノマネは中国に任せ、日本は基礎科学の深耕と、その基礎科学より派生する応用技術製品で世界に勝負をかける必要がある。

スピード製鉄にしてもそうだ。昔は十年一仕事といわれ、これといわれる技術を作り上げるのに10年は必要だとされた。しかし、最近は目先の利益に振り回され、遅くとも2〜3年でモノになる技術・製品を求める傾向にあった。その結果、製品が出来上がったときには、競合他社も類似品を完成させ、その結果熾烈な値下げ合戦が起こり、勝者なしとの結果に終わる場合も非常に多かった。

製法の開発においては、従来の製品より1〜2割コストを下げる方法の開発も大切ではあるが、まったくの原点に立ち返り、一から原理原則に従って製法を作り上げることも重要である。1〜2割の値下げ処方を開発するのに苦しんでいたのがうそのように、全く新規な、競争力のある技術が生まれる可能性があり、そのような技術が技術立国・日本には求められている。




日本経済新聞 1月4日より引用






◆神戸製鋼、原料費用を低減し、製鉄時間を短縮する新技術、実用化実験へ   部分引用

 鉄鋼の製造工程は、鉄鉱石から鉄分を抽出し、溶けた鉄を製造する製銑工程
と、溶けた鉄を用途・ニーズに応じて調整する製鋼工程の二つに分けられる。
工程の概要は以下の通り。

 1.製銑工程
  (1)焼結工程:
    粉上の鉄鉱石に石灰石を混ぜて一定の大きさに焼き固め、焼結鉱を製
    造する。
  (2)コークス工程:
    炉の中で石炭を蒸し焼き、コークスを製造する。
  (3)高炉工程:
    高炉に焼結鉱とコークスを投入し、1200℃の熱風で燃やし、溶銑(溶
    けた銑鉄)を製造する。

 2.製鋼工程
  (4)溶銑予備処理工程:
    銑鉄中のリン、硫黄等の不純物を除去する。
  (5)転炉工程:
    銑鉄に、酸素を加え炭素分を除去し、合金等を加えて成分調整する。
  (6)二次精錬工程:
    水素、酸素、不純物等を除去し、更に精度を高めて成分調整し、溶鋼
    となる。

 こうしてできた溶鋼が、連続鋳造工程によって、用途の応じた中間素材(ス
ラブ(→鋼板)、ブルーム(→形鋼)、ビレット(→線材)など)となる。鋼
板であれば、スラブが圧延を経てコイルとなり、鋼板として仕上られる。

 今回の技術は、この製銑工程において、鉄鉱石の粉と石炭の粉を加熱して固
めた石ころ状のペレットにすることで、短時間で効率的に銑鉄を製造するとい
うものである。

 従来、焼結鉱とコークスを高炉に投入して溶銑を取り出すまでに 7時間前後
かかるが、この「ハイブリッド結合鉱石」と呼ばれるペレットに置き換えると、
理論上は 30分で可能になるという。実際には、現行の原料と混ぜて使うことに
なるというが、約 2 割をペレットに置き換えると、1〜 2時間早められる可能
性があるという。つまり、これが実用化されれば、鉄鋼自体のコスト低減と製
造能力の向上が実現すると期待されている。



(株)神戸製鋼所、CO2排出量の少ない次世代製鉄法の商業機第一号プロジェクトを開始
発表日:2007.11.21

(株)神戸製鋼所は、CO2排出量の少ない次世代製鉄法の商業機第一号プロジェクトを開始する。このプロジェクトは、同社が開発した次世代製鉄法による年産50万トンの粒鉄製造プラントを、米国スチール・ダイナミックス社との合弁により建設・稼動させるもので、建設地はミネソタ州、操業開始は2009年中頃の予定。この新たな製鉄法は、世界的な鉄鋼需要の高まりに対応するため、従来の高炉法とは全く異なるプロセスで、比較的低品位の鉄鉱石や石炭を活用しつつ、高品位の粒鉄を短時間で製造できるのが特長。また、CO2排出量の約20%削減をはじめ、設備投資額や原料コストも低く抑えられることから、特に新興国における環境に配慮した鉄鋼産業の育成に効果を発揮すると期待される。





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