159. 「和歌山毒物カレー事件」とは何であったのか? 疑わしきを罰した事例?と考えてよいか?

 2009年 6月 4日掲載  2014年 3月 2日再掲


和歌山毒物カレー事件は不明な点が多く残ったままの事件である。不明な点を残しながらもWikipediaの記事にあるように、状況証拠だけで被告に死刑が確定した。この種の事件としては、Wikipediaの記事も短いものとなっている。記事を書こうにも、類推部分があまりにも多いため、責任を持った記事にできなかったことがその原因と考えられる。

2009年6月の雑誌・現代化学6月号に「和歌山毒カレー事件をかえりみる Anthony T.Tu」が掲載された。著者は毒物学の権威である。

この記事によると、
 毒物は三酸化二ヒ素(As2O3)
 致死量は200〜300mg
 カレーなべに加えられた量は200g
 急性ヒ素中毒の症状が10分であらわれ
 これは平均20〜120mgを摂取した計算

著者の疑問点は
 毒の入手先
 加害者の特定

毒の入手先は、兵庫県にあるSPring-8を用いたAs2O3に含まれるスズ、アンチモン、ビスマスを測定の結果、被告の家にあるAs2O3と同一であることが分かった。

しかし、著者は「今回の裁判の特徴は、判決に必要な証拠はすべて”状況証拠”であり、自供もなければ、犯人が毒をカレーに入れた現場を見た証人もいない。」「SPring-8の分析結果が正しいとしても、それは中国の工場でつくられたヒ素の”ある製造部分(ロット)が同じ”であるということであり、ほかの人が同じヒ素をいる可能性を完全に排除できない。すなわち被疑者の家にあったヒ素が犯行に使われたという絶対的証拠にはならない。」と書いている。

ロス疑惑」もそうであったが、マスコミの関与(お祭り騒ぎ)を取り除けば、裁判の結果はどのようになっていたであろうか。このたび、裁判員制度が始まった。裁判員とマスコミの視点の違いに注目している。



和歌山毒物カレー事件(Wikipedia)
引用開始
 和歌山毒物カレー事件(わかやまどくぶつカレーじけん)は、1998年7月25日夕方、和歌山県和歌山市の園部地区で行われた夏祭において、提供されたカレーに毒物が混入された事件。カレーを食べた67人が腹痛や吐き気などを訴えて病院に搬送され、4人(64歳男性、54歳男性、16歳女性、10歳男性)が死亡した。
 1998年10月4日、知人男性に対する殺人未遂と保険金詐欺の容疑で主婦・林眞須美(はやし ますみ、1961年7月22日 - )が逮捕された。更に12月9日には、カレーへの亜ヒ酸の混入による殺人と殺人未遂の容疑で再逮捕された。
 林は容疑を全面否認したまま裁判へと臨み、1審の和歌山地裁、2審の大阪高裁において共に死刑判決を受け上告していたが、2009年4月21日に最高裁判所が上告を棄却。判決訂正も5月18日付で棄却したため死刑が確定した。
自白といった直接的な証拠がなく、状況証拠だけで死刑判決が出された事件として異例だったと言える。裁判では動機も解明されなかったが、そのことが  被告が犯人であるという認定を左右しないと最高裁で認定されるなど、未必の故意による殺人としても異例である。
                                     引用終了




書籍 マスコミは何を伝えたか―追跡・和歌山カレー事件報道
第1章 事件発生
第2章 疑惑
第3章 逮捕
第4章 裁判
第5章 報道被害―インタビュー・木村哲也弁護士に聞く




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