63. 水銀 その作用は水俣病の原因物質から薬、歯科治療用アマルガム、メッキ、そして18金指輪の破壊までと幅

 2008年12月23日掲載  2014年 1月13日再掲


水銀=毒物の公式が私たちの頭の中にはあるが、水銀電池や体温計、また大気圧をはかる圧力計にとわたしたちはその特徴を利用してきた。中国においては薬として珍重され、その結果多くの人が命を落としたとされる。

私と水銀の出会いは古い。家に水銀が多量に入ったガラス容器が置いてあり、その中に手を漬けて遊んでいた。小学校に上がる前である。今にして思えば無謀なことかもしれないが現在までその影響は出ていない。

大学においては、水銀を硝酸で洗浄したり、また床にこぼれた水銀を銅線(電線をほぐしたもの)を持って追い回した。これは、水銀の粒が銅線表面にくっついてくる性質を利用したものだ。おそらく銅線表面には水銀とのアマルガムが形成されているものと思われる。

さて、今月に入ってから、水俣病に関して、その認定とチッソへの支援金金額の決定がニュースをにぎわせている。そこで、これらの情報も含め、水銀について一度整理してみようと思い立った。


水銀 Wikipediaより
引用の開始
 融点 -39℃、比重 13.6の液体
 水銀や辰砂(鮮血色をしている)はその特性や外見から不死の薬として珍重されてきた。特に中国の皇帝に愛用されており、それが日本に伝わり飛鳥時代の持統天皇も若さと美しさを保つために飲んでいたとされる。
 1970年代にイラクでは、メチル水銀で消毒した小麦の種を食用に流用したパンによって有機水銀中毒で400人以上が死亡する事件がおきた。
 気化した場合には肺から吸収されやすく、体内に吸収された場合にはヘモグロビンや血清アルブミンと結合し毒性を示す。
 生物に対して毒性が強いために、近年は使用が控えられている金属である。
 超伝導は水銀の冷却中に初めて発見された現象である。


水俣病 Wkipediaより引用
引用の開始
 水俣病(みなまたびょう)は、公害病の一つでチッソが海に流した廃液により引き起こされた。1956年に熊本県水俣市で発生が確認されたことがこの病名の由来である。
 熊本水俣病は、チッソ水俣工場が、アセトアルデヒドの生産に触媒として使用した無機水銀(硫酸水銀)に由来するメチル水銀(神経毒)が原因である。アセトアルデヒドは、アセチレンを希硫酸溶液に吹き込み、触媒下で水と反応させることにより生産される。工場は触媒の反応過程で副生されたアルキル水銀化合物(主として塩化メチル水銀)を排水とし水俣湾に排出した。
 新潟水俣病(1965年に認定)も熊本水俣病と同じ原因で発生した。阿賀野川上流の昭和電工鹿瀬工場が廃棄したメチル水銀による。
  補足)HgSO4 → CH3HgCl(神経毒、人体に蓄積される)
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http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20081221-OYS1T00319.htm
水俣病新救済策、チッソ支援に23億円 九州読売 12月21日
引用の開始
 12月20日内示された財務省原案で、水俣病総合対策は今年度より約19億円多い114億7100万円が計上された。
 与党プロジェクトチームがまとめた未認定患者の新救済策について原因企業のチッソが前向きな姿勢を見せ始めたため、チッソが受け入れた場合の同社に対する支援金約23億円が新たに盛り込まれた。
 新救済策では一定の条件を満たす人に、同社が1人150万円の一時金を支払う。支援金は同社が一時金を自力で負担できない場合に熊本県などを通じて貸し付けるもので、今回計上した約23億円は約1500人分にあたる。
                                    引用の終わり

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081224k0000m040036000c.html
引用の開始 毎日新聞社 12月24日
新潟水俣病:新たに1人認定へ…1年9カ月ぶり 年内にも
 水俣病の認定審査を行うため22日に開かれた新潟県と新潟市の「公害健康被害認定審査会」で、申請者10人のうち1人が、症状などから「認定相当」と判断されたことが分かった。認定されれば、新潟水俣病では07年3月の2人以来、1年9カ月ぶりとなる。同審査会はこれまで692人を認定し、延べ1323人を棄却している。
                                    引用の終わり

金採掘で大規模水銀汚染/放出量年1千トンにも
西日本新聞 2007年1月20日より
http://news.shikoku-np.co.jp/national/science_environmental/200701/20070120000093.htm
引用の開始
 発展途上国で金を採掘する際に使われ環境中に放出される水銀は、世界の総排出量の3分の1に当たる1000トンに達し、最大の水銀汚染源になっているとの国連の調査報告書が20日、明らかになった。金採掘による水銀汚染は10年以上前から日本の研究者らが指摘してきたが、これが初の世界規模の評価だという。
 報告書は「水銀を使う作業に多くの児童が従事しており、健康被害も懸念される」とし、国際協力で使用量の削減を早急に進めるよう求めた。
  補足)金鉱石を水銀で処理すると金がアマルガムを作って溶け出し、そのアマルガムを加熱すると水銀が蒸発して金が残る。
                                  引用の終わり

WBS和歌山放送ニュース(2008年10月19日)
http://wbs-news.net/article/21417545.html
引用の開始
鯨肉を食べると毛髪中の水銀が高濃度に
 クジラの肉を食べる機会が多い人は、髪の毛に含まれる水銀濃度が高い傾向にあることが、太地町の住民を対象にした調査で分かりました。
 男性30人の平均は21・6ppm、女性20人では11・9ppmで、いずれも日本人の平均値のおよそ10倍の水銀濃度となりました。
 さらに、神経症状など健康影響の可能性が指摘される毛髪中の濃度50ppmを超える人が3人確認されました。
  補足)食物連鎖の頂点にあるクジラに水銀が濃縮されます。
      食物連鎖の頂点は人間だろう!?
                                 引用の終わり



マーキュロクロム液(赤チン) Wikipediaより
引用の開始
 殺菌・消毒薬である。マーキュロクロム液100ml中に2gのマーキュロクロムを含むため、水銀を0.42–0.56 w/v%含む。マーキュロクロム (C20H8Br2HgNa2O6) は青緑色から帯緑赤褐色の小葉片または粒状の物質。
 日本では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止されたが、常備薬として求める声は多く、海外で製造した原料を輸入する事で現在も販売されている。
  補足)子供のころに怪我をすると必ずオキシフルと赤チンでした。
                                    引用の終わり

塩化水銀(Ⅰ) Hg2Cl2 別名は甘汞(かんこう)、Wikipediaより
 かつては下剤や利尿剤として利用されていたが、水銀中毒の危険があるために現在は使用されていない。塩化水銀(I) は電極として利用されることがある。

塩化水銀(Ⅱ) HgCl2 別名は昇汞(しょうこう) Wikipediaより
 かつてはバッテリーや、薄めて殺虫剤や消毒液、防腐剤として使われていたが、毒性が強いために現在では使用されていない。生物学の実験で昆虫を無菌飼育するときに卵を無菌化する殺菌剤として塩化水銀(II) が挙げられることがある。

殺菌剤 (農薬その他) Wikpediaより
 有機水銀の一種が東京大学大学院農学生命科学研究科付属農場(東京都西東京市緑町1-1-1)の実習田で、1997年から1999年にかけて使用されていたことが判明し、社会問題となった。この場合は、1973年に農薬取締法で使用が禁止された「酢酸フェニル水銀」であった。これを苗床にまく前の種もみを消毒するために使用された。かつて酢酸フェニル水銀はイネいもち病の薬剤(殺菌剤)として広く使われていた。

アマルガム Wikipediaより
引用の開始
 アマルガム (amalgam) は、水銀と他の金属との合金の総称である。

歯科治療用のアマルガム
 アマルガムは歯科修復材料として知られる。アマルガムが歯科修復材料として使われだしたのは1826年のフランスといわれる。現在はあまり使われていない。

アマルガムめっき
 銅の表面を磨き上げてから金アマルガムを塗り加熱すると、水銀のみが蒸発して表面に金が残る。日本では古墳時代以来使われているめっき法で、「消鍍金(けしめっき)」などとよばれた。
 奈良の大仏の金めっきにおいてもこの方法が用いられたが、水銀蒸気による中毒が作業者に多発したものと想像される。
  補足)鍍金よりめっき、またはメッキといわれるようになったとか。
                                      引用の終わり


18金の指輪がぼろぼろになる!?
http://wwwz.fujitv.co.jp/seikatsu/kurashi/katei/j022.htm
引用の開始
 商品研究所に相談があったクレームの中に、18金の指輪が銀色に変色して、ぼろぼろになってしまったというものがあります。
 18金の指輪は、さびたり腐食したりすることはほとんどないというのが一般的な常識です。しかし、送られてきた指輪は、下の写真のようにくすんだ銀色に変色し、ぼろぼろに砕けていました。



(中略)

さてその原因は
 指輪の持ち主はこれを化粧ポーチの中に入れていたそうですが、以前に水銀の入った体温計を壊したことがあるということでした。その水銀がポーチの中に残っていたと考えると、指輪がぼろぼろになってしまったことに一応の説明はつくことになります。
  補足)金のアマルガム化


                                     引用の終わり




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