33. EUでのCO2排出量取引 その厳しい内容の現状と将来

 2008年11月15日掲載  2014年 1月11日再掲


環境に関する仕組み作りはヨーロッパから始まります。ISO9000、ISO14000、そしてREACHしかり。ゲルマン民族はルールを作り、その契約に従って行動するのが好きなようです。ヨーロッパにおける長い歴史において、多民族間の利害を調整するための知恵なのかもしれません。

さて、日経産業新聞の10月30日版に
 低炭素社会への道 走り出す欧州 排出量取引 世界を先導
 EU域内CO2 5兆円市場 「次の枠組み」難航
とのタイトルで記事が掲載されました。

EU内に取引所は4ヵ所あり、その取扱量が11.8億トン、取扱金額が5兆円ですので、CO2の1トン当たり平均3200円で取引されたことになります。EUにおいては、CO2排出可能量は企業ごとに割り当てられ、この排出量を超えてCO2を排出する場合には、CO2の排出権を購入してでもツジツマを合わせる必要があります。さもないと、高いペナルティが課されることになります。



そのペナルティは、京都議定書の約束期間である第2期(08−12年)においては、CO2の超過量1トン当たり100ユーロ(12300円)の罰金と、さらに次の第3期における超過分に等しい量のCO2排出量枠の削減です。

CO2を1トン排出する市場価格が3200円ですから、排出権を購入するのが妥当な判断となるわけです。また、次の期の排出枠の削減は、京都議定書における約束事であり、これは日本にも当てはまります。

EUにおいては次の期・第3期(13−20年)がどうあるべきかの議論が既に始まっています。環境や安全に関するルールは、あるべき論に加えてルールの作成主体が自分にとって都合のよいルールとする部分もありますので、日本は大きく立ち遅れているといえるでしょう。米国のように、「環境など知るものか」との強い態度に出る勇気は日本にはないでしょう。



なお、日本の温室効果ガスの排出量は、次の記事にも示されるように、増え続けているのが現実です。ポスト京都議定書の実施期間後に大きなペナルティが待っているかもしれません。

http://izuru136.cocolog-nifty.com/ndi2/2008/11/2007-5a0f.html

以下、引用
環境省は12日、07年度の温室効果ガス排出量(速報値)が過去最悪の量にのぼったことを正式に発表しました。増加の主な原因は原発稼働率の低下で、京都議定書が定めた90年度比6%削減という目標の達成に向けて、温暖化対策を原発に頼っている危うさが浮き彫りになりました。

メタンや代替フロンなどを含む温室効果ガス全体の07年度の排出量は、二酸化炭素(CO2)に換算して13億7100万トン。06年度より2.3%増えています。このうち化石燃料の使用に伴うCO2の排出は12億1800万トンで同2.7%増でした。(筆者注、日本の排出量は先物も含めたEU内での排出量取引量11.8億トンに近い)

部門別でみると、工場などの産業部門では生産量が増えたため、CO2排出量も3.6%増加。特に鉄鋼業で4.8%増えたことが影響しました。またオフィスや店舗などの業務部門は1.2%増、家庭部門は8.4%増でした。




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