7. バーチャル・ウォーターとは何か   21世紀は水の奪い合いの時代となるか?

 2007年 3月 3日掲載  2014年 1月10日再掲


 人間の生活を支えるために大切なものは何か? 色々あるが大切な順番に並べると? さてその答えは?

 簡単なようで難しい問題ですが、その答えは、多くのひとにとっては水であると考えられます。1週間食べ物を口にしなくても人は死なないが、1週間水がないと人は生きて行くことは困難です。すこし極端な表現となって申し訳ありません。

 近年、石油などのエネルギー資源の枯渇、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の使用量増加に伴う地球温暖化、人口爆発による地球環境の大きな変化と食料問題、など数え上げたらきりがありませんが、人が生きて行くうえで何と言っても大切なのが水であることは間違いありません。地球上にある水の97.5%は海水として存在し、僅かに2.5%が淡水です。しかも、その淡水のうち河川などに流れることにより地上を循環している水はごく僅かで、この量は地球上に存在する水の量の僅かに0.001%であると言われています。

 私たちはこの水を、全地球規模で見ると生活用水(1割)、工業用水(2割)、農業用水(7割)として使用します。この使用割合より、水は食料を得るためにも非常に重要であることがわかります。食料の大輸出国であったオーストラリアは、ここ数年の干ばつにより、現時点では食料の輸入国になっている事実からしても、水はその国の国民と繁栄に大きな影響を及ぼす経営資源であることは間違いありません。

 食パン1斤を得るまでに必要な水の量は500〜600リットル、ステーキ200グラムを得るには約4000リットル(4トンの水ですよ)が必要であると言われています。牛肉1kgを得るためには、16kgの穀物を与える必要があると言われ、このことも関係して、ステーキを得るのに多くの水を必要とする結果となっています。

 穀物や食肉を輸入することは、それを育てるために要した水も同時に輸入することになります。この統計上に表れてこない水のことをバーチャル・ウォーターと呼んでいます。2000年におけるバーチャル・ウォーターの総輸入量は640億トン(国民一人当たり約500トン強)と非常に大きな値となっています。この量は1人1日当りに換算すると1400リットル強と非常に大きな値となります。一方、日本で農作物育成のために灌漑に用いられる水量は590億トンとバーチャル・ウォーターでの輸入水量640億トンを下回っています。

 国は日本の食料自給率を、エネルギー自給率40%と発表していますが、穀物自給率では28%と低い値となります。現在、日本の人口減少が大きな問題となっていますが、食料自給率を考えるとまだまだ日本の人口は過剰であると言わざるを得ないのでしょう。地球的規模での大きな気象異変や、中国やインド、その他の国々において工業化の進展やそれに伴う公害の発生、人口の増加などにより農産物に割くことができる水の量が減少してきたとき、真っ先に影響を受ける国は、穀物を海外から購入する力のない国や、穀物を持っていてもそれを海外に輸出せざるを得ない政治的な構図となっている国々であると考えます。日本は、現在は穀物を輸入できていますが、その価格が高騰してきたときに、大きな影響を受けることは必死であると考えられます。合わせて、日本は休耕田が多いと言っても耕地の多くは農作物を育て、夏には川の水量が減少するので穀物に与える水の心配をしなければならない。日本は水が豊富と考えられていますが、決してそうではない。ことも自覚することが必要でしょう。


イナックスのホームページより
http://www.inax.co.jp/company/news/2006/060_eco_0331_48.html 

100gを得るのに必要な水量



食育・食生活指針の情報センターのホームページより
http://www.e-shokuiku.com/jyukyu/13_2.html
(※再掲載時点でリンク切れ)








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