説明資料 34
  
 エアバッグは火薬の爆発で発生したガスでバッグ(クッション)を膨らませる。火薬の爆発速度が速すぎるとバッグが急激に膨らみ人体を強打して傷つけることになるし、遅すぎると本来の役割を果たさなくなる。したがって、そのガスの発生速度にはスライド1に示したように、適正な設計が求められる。

 スライド2にはタカタのエアバッグのリコールの状況と、品質不良が発生した原因について、その情報を転記している。

 溶接箇所の強度が出ていなくて爆発に至った、火薬に錆が混ざりこんで触媒作用で爆発速度を速くしたことが問題、火薬の材料として使われている硝酸アンモニウムが吸湿し、火薬にひび割れが起こり火薬の燃焼面積が広くなった結果急激に火薬燃焼が進んで圧力が設計圧力以上に高まったことが原因、あるいは、そもそも硝酸アンモニウムは説明資料26で示したように、温度が変わると結晶の体積が変化するので火薬が微粉化して行き燃焼が速まったことが問題等々、その原因は諸説入り乱れ、いまだに真の原因には到達していない。

 国土交通省の平成28年5月28日付資料は、火薬中の硝酸アンモニウが湿気がある状態で長期間温度変化にさらされると、火薬が劣化すると報じた。この原因はタカタ(Wikipedia)およびTakata(Wikipedia)には反映されていない。


 スライド2の内容からは、タカタは100万個に6~8個の不良率で製品品質をコントロールしようとしていたことが分かる。スライド3からこれがファイブシグマでの品質管理であることがわかる。ハインリッヒの法則(ハインリッヒの300事故)というのがあるが、この6~8個の不良が軽微のものか重大なものかは不明であり、その想定していた不良がどのようなものであったかに興味がもたれる。

 スライド4は国土交通省のホームページであり、この一連の事故の重要度が伝わってくる。製品製造時にトレーサビリティの思想は取り入れられていたのだろうか(当然取り入れられていたものと思う)。トレーサビリティがなされていれば、原因の追究は今よりも容易であり、リコールの範囲ももっと狭くて済んだはずだ。

 スライド5では、タカタの使用している硝酸アンモニウムはPSANというもので、世間で言われている硝酸アンモニウムとは異なるものであり、温度によって結晶系が変わる(説明資料26のスライド1)ものではないと、タカタの技術者が述べている。しかしながら、このPSANがタカタが独自で開発した硝酸アンモニウム種であるかどうかは私にはわからない、なぜなら、スライド1の下方で示しているように、特許検索をするとタカタはエアバッグの構造については多くの特許を出しているにもかかわらず、火薬に関する特許は皆無であるからである。

 スライド6は火薬の燃焼面積と燃焼圧力の関係を示している。燃焼の進行につれて燃焼面積が増加していけば、燃焼圧力も増加していく。


  
 
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