308. 書籍「日本経済の真実」(辛坊治郎)に寄せられたアマゾンでの厳しい読者評価を解析してみる

 2010年 5月13日掲載  2014年 5月 5日再掲


いまベストセラーとなっている書籍「日本経済の真実 ある日、この国は破産します」(辛坊治郎、4月25日)は先に紹介したように、その評価が分かれている。5月12日時点での、アマゾンの読者による5点満点評価で次のようになっていて、結果はやはりまだ真っ二つに分かれたままだ。

     19レビュー
     星5つ: (3)
     星4つ: (5)
     星3つ: (1)
     星2つ: (6)
     星1つ: (4)

今まで言い尽くされてきたありきたりのことを書いただけとか、小泉内閣に良い点数をつけすぎるだとか、民主党の政策を否定するものであるとか。反対に、日本の置かれている状況をよくぞ教えてくれたというのもある。

19このレビューを、そのレビューが投稿された順番に並べてみたのが下の表である。この表は、まず左から、通し番号、投稿日、5段階評価の何点か(この点数の高いほど評価が高い)、そしてこの投稿に対して投稿を読んだ読者より何通のアクションがあったかが投票数で、その右側の内評価はこの投稿に価値を感じた投票者の数である。そして一番右端が、レビューの投稿者がアマゾンの書評に投稿した投稿総数である。

評価の項目を見ると、最初のうちは評価が比較的高いが、後になるほど評価が下がってきている。投票数と内評価を見ると、厳しい評価を下したレビュー内容が参考になったとの回答が多い。逆に高い評価に対してはあまり参考にならなかったということになる。

参考になったかならなかったかの評価については、いろいろな見方があると思うが、たとえば、高い評価のレビューに書かれている内容については、そのレビューを読んだ人はそんなことはわかっていので特に参考にはならなかったと言っている可能性がある。逆に、厳しいレビューについてはそんな考え方もあったのかと、いままで知らなかった考え方に触れ、参考になったと言っている可能性もある。あくまでも可能性であるが。



このレビューのなかよりいくつかのレビューを抜き出すと次のようである。


No.7 評価1 最も投票数の多かったレビュー   続くブログで考察を加えました
1)日銀が国債を買えば、ハイパーインフレになるのだそうですが、各国の中央銀行は大量の国債を買っております。今回の世界金融危機で景気対策のための国債購入などで各国中央銀行のバランスシートは激増しています。例えば英イングランド銀行は3倍近く、米連邦準備制度は2.5倍近くにもなっていますがハイパーインフレにならないのはなぜですか?

2)長期金利は現在の日本では1.3%ですが、諸外国は最低でも3~4%、多くはそれ以上です。日本にハイパーインフレが来るなら、どうしてこのような超低金利で長期国債が売れるのですか?(将来国債が紙くずになるのなら、こんな超低金利で長期国債を買うわけがないでしょう)

3)1989年のアルゼンチンのハイパーインフレと同じ事が日本に起きるかのごとく書いてありますが、アルゼンチンでは外貨が不足し輸入ができなくなった半閉鎖的経済で起こったことです。輸入が途絶えればすぐに物不足は起き、奪い合いが発生します。例えば輸入薬が無ければ死んでしまう人なら、どんなに高くても闇市からでも買うでしょう。日本はそれと正反対で、特定の商品の物価が上がればすぐに外国から安い商品が入ってきて、ハイパーインフレはあり得ません。同意されますか?

4)具体的に何の値段が100倍に上がるというのですか。家電製品ですか。米ですか。野菜ですか。車ですか。魚・牛肉・石油ですか。需要が急拡大し、生産(供給)が追いつかなくて品不足にならないと値段は急騰しません。具体的にどの商品がそのような極端な品不足になるのか説明して下さい。

5)アルゼンチンのように深刻な外貨不足の国の例でなく、日本のように外貨をたっぷり持っている国で起こったハイパーインフレの例を挙げないと意味がないと思いますがどのようにお考えでしょうか?


No.11 評価2  続くブログで考察を加えました
経済を語る前に簿記の勉強をなさったほうがよろしいのではないでしょうか?
本文の中に、「ジーンズ10万本隣国に輸出して1億円を得るとGDPは1億円となり国民所得が1億円になるが、その1億円を飲み食いに消費してしまうと翌年もジーンズは10万本しか作れないからGDPは増えない。消費の中から我慢して設備投資に回し生産できるジーンズの本数を増やさなければGDPは増えない。」とあります。
一見正しいように見えるかも知れませんが、完全な誤りです。 以下省略。


No.14 評価3
第3章では小泉・竹中改革に対する筆者の思いをデータとともに提示してあります。小泉・竹中路線への批判を目にすることはよくあるのですが、擁護しているのは珍しいので一読されてもよいかと思います。


No.18 評価4
今年度は戦争中以来の支出過多財政です。
そして、民主党マニフェストを廃止しない限り来年度はもっと酷い財政になる予定です。

民主党マニフェストから、外国人投資家が日本国債の先物を売りたてました。
「先物を売る」ということは、日本国債の値段が今より安くなると儲かる仕組みです。

債権は金利上昇で価格が下がります。
外国人投資家は日本の金利上昇による日本国債破綻を期待しているのです。







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