令和2年度 技術士一次試験 基礎科目 解答


10月11日に実施、10月19日に公開されたその試験問題の解答を作成した。(10月20日公開)



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 書籍

 技術士一次試験 基礎科目を極める(2022年版)
   令和3年12月9日 増補版の販売を開始

 平成16年度~令和3年度 基礎科目の解答を収録

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問題番号

問題の内容

「基礎科目問題を
極める」
関連ページ

キーワードなど

問題の難易

(目安)

第1群   設計・計画

1-1

ユニバーサルデザイン

28-32

バリアフリーデザインも

1-2

材料の強度と応力

37-38、74-75

2つの正規分布の加減

1-3

応力による材料の変形

68

降伏、破断、座屈、圧壊

1-4

生産量の最適化

49-50

作図による解法

1-5

製図法におけるルール

33-34

第三角法

難?

1-6

システムの信頼度

7-13

繁出問題

 第2群   情報・論理

2-1

情報の圧縮方法

85-86

新傾向問題

難?

2-2

真理値表で論理計算

115-118

繁出問題

2-3

標的型攻撃への対策

106-111

ウイルス、改ざん

易?

2-4

2進数の補数表現

83-84

平成30年度に出題

難?

2-5

2進10進変換アルゴ

136-146

アルゴリズム図は繁出

2-6

メモリ検索の所要時間

94

キャッシュメモリ

 第3群   解析

3-1

ベクトルの発散値

198-201

繁出問題

3-2

関数上の点での傾き

 

易??

3-3

数値解析の誤差

97-98174-175

テイラー級数展開

3-4

有限要素法の面積座標

179-180

足し合わせると1

難?

3-5

ばねの固有振動数

173-174

重力加速度gを含まず

3-6

配管中の水の流速計算

 

ベルヌーイの定理

 第4群   材料・化学・バイオ

4-1

燃焼時のCO2発生量

237-238

化合物中の炭素割合

4-2

有機化学反応の種類

 

付加、脱離など 新問題

易?

4-3

金属の性質比較

259-260

Al軽い、Cu、Feは

4-4

アルミの結晶構造

254

昨年度問題の発展形

4-5

酵母のグルコース発酵

291-292

好気発酵と嫌気発酵

4-6

PCRの特徴と手順

280

コロナ下での今日的出題

難?

 第5群   環境・エネルギー・技術

5-1

プラスチックごみ問題

 

中国から、今日的出題

5-2

生物多様性の保全

348-349

外来種の駆除

5-3

日本のエネルギー消費

316-317

産業、業務、家庭、運輸

易?

5-4

日本のエネルギー情勢

294,311-312,319

コンバインドサイクル

易?

5-5

日本産業の技術発展史

 

新問題

難?

5-6

科学技術史

363-369

ジェンナーによる種痘法





令和2年度技術士一次試験 基礎科目


1群   設計・計画

Ⅰ-1-1 ユニバーサルデザイン
Ⅰ-1-2 材料の強度と応力
Ⅰ-1-3 応力による材料の変形
Ⅰ-1-4 生産量の最適化
Ⅰ-1-5 製図法におけるルール
Ⅰ-1-6 システムの信頼度


2群   情報・論理

Ⅰ-2-1 情報の圧縮方法
Ⅰ-2-2 真理値表に基づく論理計算
Ⅰ-2-3 標的型攻撃への有効な対策
Ⅰ-2-4 2進数の補数表現
Ⅰ-2-5 2進を10進に変換するアルゴリズム
Ⅰ-2-6 メモリ検索にかかる時間


3群   解析

Ⅰ-3-1 ベクトルの発散値を求める
Ⅰ-3-2 関数のある点での傾きを求める
Ⅰ-3-3 数値解析の誤差
Ⅰ-3-4 有限要素法の面積座標
Ⅰ-3-5 ばねの固有振動数
Ⅰ-3-6 配管中の水の流速計算



4群   材料・化学・バイオ

Ⅰ-4-1 有機化合物燃焼時のCO2発生量
Ⅰ-4-2 有機化学反応の種類
Ⅰ-4-3 金属の性質比較
Ⅰ-4-4 アルミニウムの結晶構造
Ⅰ-4-5 酵母菌によるグルコース発酵
Ⅰ-4-6 PCR技術の特徴とその手順



5群   環境・エネルギー・技術

Ⅰ-5-1 プラスチックごみ問題
Ⅰ-5-2 生物多様性の保全
Ⅰ-5-3 日本のエネルギー消費
Ⅰ-5-4 日本のエネルギー情勢
Ⅰ-5-5 日本の産業技術発展の歴史
Ⅰ-5-6 科学技術史




            技術士一次試験・基礎科目 H16年~28年の356全問解答集へ戻る




            R02年 基礎科目問題(日本技術士会)




解答



1群 設計・計画に関するもの

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Ⅰ-1-1 ユニバーサルデザイン 

解答:③

ノーマライゼーションは1950年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念のひとつで、障碍者も健常者と同様の生活ができるように支援すべきという考え方である。カスタマイズからは障碍者が健常者とは異なる環境で生活できるようにする、とのニュアンスが伝わってくる。

「基礎科目問題を極める」 pp29~30より

ユニバーサルデザインは、ロナルド・メイスにより提唱されました。

特別な改造や特殊な設計をせずに、すべての人が可能な限り最大限まで利用できるように配慮された製品や環境設計をいいます。

(1)誰でも公平に利用できる(誰にとっても利用しやすくする)

(2)利用における柔軟性がある

(3)単純で直感的に利用することができる

(4)認知できる情報(必要な情報がすぐに理解できる)

(5)失敗に対する寛大さ(失敗しても危険性がない)

(6)少ない身体的な努力

(7)接近や利用のためのサイズと空間




Ⅰ-1-2 材料の強度と応力

解答:④

「基礎科目問題を極める」 pp74~75に関連する問題(H29-1-1-6)があります。

この問題では、構造物の耐力Rと作用荷重Sが共に正規化された長方形で与えられ、RとSの重なり部分を破壊確率として算出しました。

本問題も基本的にはH29年度の問題と同じであると考えられますが、RおよびSが正規分布として与えられるところに違いがあります。厳密には正規分布を関数f(x)、関数f(x)として、重なり積分∫F(x)f(x)dxを求めなければなりませんが、短い試験時間内ではそのようなことは不可能に近いと考えられます。

そこで、簡易的にではありますが、問題文に与えられているμおよびσを反映させて、長方形にはなってしまうのですが、イメージが沸くように図を作成しました。(ア)~(エ)のいずれも、図の左側が材料に生じる応力S、右側が材料の強度Rです。


   


問題文では「Z=R-Sが0を下回る確率Pr(Z<0)が一定値以下となるように設計する」と記されています。(Z<0)は紛らわしい表現ですが、Zが負になると材料の破壊が起こるという意味です。したがって、この破壊の起こる確率Prが小さなケースはどれですか? とこの問題は聞いています。

いま仮に、SとRが大きく離れている場合は、応力Sに対して非常に頑丈な材料であり、Z=R-S(正規分布の重なりPr)は非常に小さな値となります。SとRが大きく重なった時には材料の破壊確率Prは大きくなり、SとRの位置関係が図で示したものと逆転したときには、材料の破壊される確率Prはきわめて大きな値となります

この図からは、一番材料が破壊される可能性が大きいのが、RとSが大きく交わっている(エ)、次に大きいのが(イ)であることがわかります。

(ア)と(ウ)の重なり(面積)は正規分布曲線を考えたとき、どちらが大きいか悩ましいところがありますが、(ア)の背の低い長方形で示したほうが、正規分布として評価したときには遠くまでそのすそ野をのばし、さらに図で示した四角形同士がより接近していますので、その結果重なり積分における重なりの面積がより大きくなると推定されます。

さらにこの問題で重要なことは、(ア)においては、左に示した長方形Sを正規分布としてイメージしたとき、そのすそ野の広がりは右の正方形Rを超えてさらに右方向までそのすそ野を伸ばしています。このすそ野の部分では、S>Rとなり材料の破壊が起こることになり、その結果として構造物が破壊される確率Prは高くなります。同じことを(ウ)でも確認してください。(ア)との歴然とした違いが見えてきます。

材料が破壊される確率Prは(ア)>(ウ)となります。

したがって、破壊のされやすさは、(エ)>(イ)>(ア)>(ウ)の順となります。求められているのは材料が破壊されにくい順番、Pr(Z<0)の小さな順にですので、この逆順である④が答となります。


※ 実に複雑ですね。もっと簡単な解法があります。それなら4分以内に答に至ります。


(参考)

講座 Lecture  機械・構造物の信頼設計  5.故障物理と信頼性理論 中川隆夫、福田収一
    「材料」 第31巻 第347号 pp840~846 からの一部抜粋





Ⅰ-1-3 応力による材料の変形

解答:③

(ア)誤り 弾性とは、外力によって変形した物体が、その外力が取り除かれたときに元の形に戻ろうとする性質です。
   したがって、変形してしまっては弾性とは言いませんので誤りです。

(イ)誤り 固有振動数と破断は関係のない話です。

(ウ)正しい 座屈に関しては「基礎科目問題を極める」 pp68~69。

(エ)正しい

(オ)正しい



Ⅰ-1-4  生産量の最適化

解答:⑤

「基礎科目問題を極める」 pp49~50が本問題を解く参考となる。

(1)
製品1の数をx個、製品2の数をy個とすると、使用できる原料AとBの重さに上限があるので、

      3x+2y≦24  式①
       x+3y≦15  式②

一方、利益は

      利益 z=2x+3y

であるから、この利益線の一例をグラフ中に書き込むと、点線のようになる。この利益線はこの傾きを保ったまま上下に平行に動くので、利益が最大となる点は図中の(x、y)=(6,3)の点である。即ち、利益=2×6+3×3=21(百万円)が最大となる。

(2)
(x、y)=(6,3)の点を維持するためのΔcを求める。

題意より、Δcを加味した利益線の傾きは、

      -(2+Δc)/3

この傾きが式①の傾きと同じになるときには、Δc=2.5、式②の傾きと同じになるときの傾きは、Δc=-1となる。
(1)で決定した製品1、2の生産量は変わらないとしているので。x=6、x=3である。
したがって、本問題の答えは⑤である。

     



Ⅰ-1-5 製図法におけるルール

解答:⑤

まずは三角法の予備知識から。

図面の投影法(第三角法)  機械設計エンジニアの基礎知識 より

   


(ア)正しい

(イ)誤り 左側面図は正面図の左に

(ウ)誤り 細い破線または太い破線を、対象物の見えない部分の形状を表すのに用いる。
  (参考)図面の描き方・見方(基礎)
  「このような図が想像図である」は誤り。想像図という用語が見当たらない。
  「このような線が想像線である」ならもっともらしく感じられるが、想像線の意味合いが違う。
  (参考)想像線(JIS規格)

(エ)誤り 投影法は明記する必要がある
  図面は採用した投影法がわかるようにマークを記載するルールとなっています。
  (参考)図面の描き方・見方(基礎)

(オ)正しい



Ⅰ-1-6 システムの信頼度

解答:③

「基礎科目問題を極める」 p7参照

次の不等式を満足するnを求める。

      (1-(1-0.7))×0.95≧0.94

n=4以上で、本不等式が成立するので、答えは③のn=4である。





2群 情報・論理に関するもの

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Ⅰ-2-1 情報の圧縮方法

解答:④

①と②は対となっていますので、ともに正しいかともに間違っているかです。不適切なものは1つのみですので、①と②は正しいことになります。

③のJPEGとMPEGはWikipediaより抜粋、

JPEG(ジェイペグ、Joint Photographic Experts Group)は、コンピュータなどで扱われる静止画像デジタルデータ圧縮する方式のひとつ。

一般的に非可逆圧縮の画像フォーマットとして知られている。

デジタルカメラの記録方式としてもよく利用されている。


Moving Picture Experts Group(ムービング・ピクチャー・エクスパーツ・グループMPEG(エムペグ)は、ビデオとオーディオに対して符号を付与する基準の開発責任を負ったISO/IECのワーキンググループである。MPEGがつくった動画等の標準規格の名称としてMPEGが使われるようになった。

④は、どのようなデータでも圧縮することは可能でしょう。ただし圧縮したデータを必要に応じて復元できるかが問題です。したがって、間違い。

⑤は、正しい。



Ⅰ-2-2 真理値表に基づく論理計算

解答:③

この問題を解くための大前提は、x=1ならばxバー(バーは上付き記号)=0ということです。y=1でz=1ならばyz=1、yzバー(バーはyとzの両方にかかる)=0となります。

①で与えられる式にx、y、zを代入していくと、4行目でf=1となり、これは正解でないことがわかります。

②では1行目でf=1となり、ここで検証は終わります。

③では最後の8行目まで、得られたfの値を満足しますので、これが答えです。



Ⅰ-2-3 標的型攻撃への有効な対策

解答:①

①のオンラインストレージとは何かからです。

オンラインストレージとは、ファイルやデータなどを格納するストレージ(貯蔵場所)をインターネット上、例えばクラウド上やホームページ上で提供することです。このストレージに格納したファイルやデータの置き場所のアドレス(URL)をメールに記載して送付することで、メール受信者は目的のファイルやデータをストレージからダウンロードすることができます。ファイルやデータがメールの添付資料として送付できない容量である場合には、便利な方法と言えます。

メールゲートウェイとは、メール受信時にウイルスに汚染されたメールやSPAMメールを判定・除去するものです。
したがって、直接にファイルやデータを転送するオンラインストレージ形式とは意味合いが異なることになりますので、この内容は不適切となります。

②~⑤の内容はしごくまっとうですので、消去法によっても①が不適切であるとの結論に至るでしょう。



Ⅰ-2-4 2進数の補数表現

解答:②

「基礎問題を極める」 p83に解法があります。

次のようになり、答えは②となります。

     



Ⅰ-2-5 2進を10進に変換するアルゴリズム 

解答:⑤

2進数を10進数に変換するアルゴリズムです。

変換すべき2進数は(11010101)です。8桁数字で、a7=1,a6=1、a5=0、a4=1、a3=0、a2=1、a1=0、a0=1です。
開始から始まり、s←anは、まずはs←a7で、a7の持っている値1をレジストsに入れます。この←の意味が分かればこのアルゴリズムを追っかけていけます。

詳細は、各自で追っかけていただくとして、

   1 s=a7
   2 s=2s+a6 2×1+1
   3 s=2s+a5 2×3+0
   4 s=2s+a4 2×6+1 13
   5 s=2s+a3 2×13+0 26
   6 s=2s+a2 2×26+1 53
   7 s=2s+a1 2×53+0 106
   8 s=2s+a0 2×106+1 213

したがって、答えは⑤となります。

アルゴリズムの問題は頻度高く出題されます。何通りかのアルゴリズムを実際に数値をあてはめながら自分で追いかけてみれば、自信が付くことと思います。

「基礎問題を極める」 pp136~146にアルゴリズム問題及びその解説があります。



Ⅰ-2-6 メモリ検索にかかる時間

解答:⑤

「基礎科目問題を極める」 p94と同じ問題です。

     50×0.9+450×0.1=90ns





3群 解析に関するもの

          R02年 基礎科目問題(日本技術士会)           トップに戻る



Ⅰ-3-1 ベクトルの発散値を求める 

解答:②

「基礎問題を極める」 p198~201に同じです。

=x、V=xy+yz、V=z。 x=1、y=3、z=2です。

     divV=∂V/∂x+∂V/∂y+∂V/∂z
        =1+x+z+3z
        =1+1+4+12
        =18



Ⅰ-3-2 関数のある点での傾きを求める 

解答:④

これも解き方は前問と同様ですね。

f(x、y)=x+2xy+3y。x=1、y=1。

       ∂f/∂x=2x+2y=2+2=4
       ∂f/∂y=2x+6y=2+6=8

したがって、grad f=(4,8)

求められているのは最急勾配‖grad f‖であるから、

        √(4+8)=4√5



Ⅰ-3-3 数値解析の誤差

解答:③

③が最も適切である。

桁落ちとは、

絶対値がほぼ等しい数値同士の加算後や、同符号でほぼ等しい数値同士の減算の後、正規化で有効数字が減少すること。

例えば、1.234-1.233=0.001となり、有効数字が4桁から1桁へと減少する。


適切でないもの・

①一般に近似誤差は小さくなる。

②計算アルゴリズムを改良すると誤差が減少することが多い。(また、計算時間を短縮できる場合も多い)

③適切である。

④微分の考え方からは、格子幅をできる限り小さくしなければならない。格子幅が大きくなると誤差を生み出す原因となる。

⑤非線形現象を線型方程式で近似できるという保証はどこにもない。



「基礎科目問題を極める」 pp96~98に数値計算の誤差。



Ⅰ-3-4 有限要素法の面積座標  

解答:④

「基礎科目問題を極める」 p179~180 面積座標に関する問題は過去にも2回出題されました(H16-1-3-5、H25-1-3-3)

今回の問題は数学的知識を必要とします。

内心の定義は、三角形の3つの角の二等分線の交点です。
図に書くと右のようになります。

内心を中心に円を描くと右図のように、その円はすべての辺に接することになります。
三角形、SA、SB、SCを考えたとき、その面積は底辺×高さ÷2ですから、各面積の大きさはその底辺の長さに比例することになります。

問題文で任意の点Pの面積座標は(S/S、S/S、S/S)と与えられていますので、
=辺BC(4)、S=辺CA(5)、S=辺AB(3)、S=S+S+S の比例関係を利用すると、
 (S/S、S/S、S/S)=(4/12、5/12、3/12)=(1/3、5/12、1/4)
となります。
 


外心の定義は、三角形の3つの辺の垂直二等分線の交点です。
図に書くと右のようになります。

問題文で与えられている辺の長さが3:4:5の三角形は直角三角形であり、その外心は一番長い辺であるCA上に来ます。

したがって、SBの面積はゼロとなり、SAの面積とSCの面積は等しくなります。

 (S/S、S/S、S/S)=(1/2、0、1/2)
となります。


以上の結果より、求める答えは④となります。
 




Ⅰ-3-5 ばねの固有振動数  

解答:①

ばねの固有振動数は次の式で与えられる。

        ばねの固有振動数=1/(2π)×√(k/m)

この公式には重力係数は含まれていないので、図1、図2、図3のばねともに同じ振動数で振動する。
ただし、振動する中心位置は、ばねの固定点から近い順に図1<図2<図3である。


「基礎科目問題を極める」 p173



Ⅰ-3-6 配管中の水の流速計算

解答:⑤

ベルヌーイの定理を用いて流速vを求める。

外力のない非粘性・非圧縮性の定常な流れに対して

        0.5v+p/ρ=一定

これより

        0.5v+p/ρ=0.5v+p/ρ        式1

さらに、非圧縮性液体であるから

        A=A  即ち v=v×(A/A)      式2

この式1と式2より⑤の式が求まる。





4群 材料・化学・バイオに関するもの

          R02年 基礎科目問題(日本技術士会)           トップに戻る



Ⅰ-4-1 有機化合物燃焼時のCO発生量

解答:②

「基礎科目問題を極める」 pp237~238に同じ。

炭素数/分子量の値の一番大きなものを選ぶ。②のエチレンが最大となる。

        C+3O→2CO+2H

エチレン28gから二酸化炭素が88g(2×44)生じる。体積に直せば、2×22.4リットル=44.8リットル(0℃、1気圧)となる。


合理的な考え方

 与えられた化合物には炭素1個を持ったものと2個を持ったものがあります。炭素1個の化合物を燃焼させると、その1分子からは二酸化炭素が1分子発生し、同じく炭素2個を持った化合物からは二酸化炭素が2個発生します。化合物の単位重さ当たり(例えば1グラム当たり)から発生する二酸化炭素のモル数は、発生する二酸化炭素量(モル)/分子量(g)で計算することができます。この数値が一番大きくなるものが求める答です。

①~⑤のすべての化合物についてこの計算を実施してもよいのですが、要は炭素含有量の大きな化合物が単位重さ当たり多くの二酸化炭素を発生することに気が付けば、答を簡単に求めることができます。次の大小比較を下に示した燃焼の化学式と見比べることにより理解を深めてください。

炭素含有量の大小比較

 CH>CHOH(CHO)、C>COH(CO)

 C>C

 C>CH(Cは2×CH、CH>CH


① CH    + 2O        → CO  + 2H

 ② C   + 3O           → 2CO + 2H

 ③ C   + 3.5O            → 2CO + 3H

 ④ CHOH  + 1.5O           → CO  + 2H

 ⑤ COH + 3O       → 2CO + 3H




Ⅰ-4-2 有機化学反応の種類

正解:③

置換反応とは、化合物が持っている構造の一部が外れ、何か別のものに置き換わる反応を言う。

反応aでは、プロピルアルコールのOHが外れ、代わりにBr(臭素)がくっついている。

反応dでは、安息香酸のOHが外れ、代わりにOCHがくっついている。

したがって、答えは③である。


反応bは脱離反応である。分子より水(HO)が脱離して二重結合が生じている。


反応cは付加反応である。反応bとは逆に、二重結合にHBr(臭化水素)が付加する反応である。

この問題文に転移反応は含まれていません。こちらを参照してください。



Ⅰ-4-3 金属の性質比較

正解:④

「基礎科目問題を極める」 p260より物性表を引用する。

答えは④となる。

アルミニウムが軽いこと(密度が小さいこと)を知っていれば、答えとしてまず③が排除される。

銅線がよく電気を通すことを知っていれば、(イ)または(オ)が答えの候補となるので、④か⑤が答えである。
電気抵抗率と聞いているので、鉄やアルミニウムは銅よりも電気を通しにくい、と読むこと。

融点は、アルミニウムが最も低くい。また青銅器時代が鉄器時代よりも先に来たことからもわかるように、鉄の融点が最も高い。






Ⅰ-4-4 アルミニウムの結晶構造

解答:⑤

「基礎科目問題を極める」 p254に関連問題(H29-1-4-3)がある。この問題は金属の結晶構造に関する初めての出題である。
この問題の答えからわかることはアルミニウムの結晶は面心立方構造で単位構造の中に4個の原子が含まれているということである。

本年の出題はH29年の出題より一歩進み、より難問となっている。

進研ゼミ 高校講座 面心立方格子 より

     


設問(ウ)に関しては、単位格子の対角線の長さで等式を立てると、

        √2×a=4R  より  a=2√2×R 
 



Ⅰ-4-5 酵母菌によるグルコース発酵

解答:③

「基礎科目問題を極める」 p292が理解できていれば容易に解ける。


題意に従って、化学式の係数を書き換える。

好気呼吸(与えられた式×1/3)

        1/3C12+2O+2HO→2CO+4H

エタノール発酵(与えられた式×2)

        2C12→4COH+4CO

両式を足し合わせると、2モルの酸素を消費して6モルの二酸化炭素を発生していることがわかる。したがって、答えは③。



Ⅰ-4-6 PCR技術の特徴とその手順

解答:④

「基礎科目問題を極める」 p280 にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に関連する設問あり。

「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)では、一連の反応を繰り返すたびに二本鎖DNAを熱によって変性させなければならないので、熱に安定なDNAポリメラーゼを利用する」

本年度のこの問題の設問も「④耐熱性の高いDNAポリメラーゼが、PCR法に適している」で最も適切なものである。

ポリメラーゼ連鎖反応(Wikipedia)より引用する。

PCR法は、試薬を混交したDNA溶液の温度を上げて下げる、という一連の熱サイクルによって動作する。このDNAサンプルの加熱と冷却の繰り返しサイクルの中で、二本鎖DNAの乖離、プライマーの結合、酵素反応によるDNA合成、という3つの反応が進み、最終的に特定領域のDNA断片が大量に複製される。

PCR法では、増幅対象(テンプレート)のDNAサンプルの他に、大量のプライマー(標的DNA領域に相補的な配列を持つ短い一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド))とDNAの構成要素である遊離ヌクレオチド、そしてポリメラーゼの一種であるDNA合成酵素DNAポリメラーゼ)という3つの試薬を使用する。

  1. 最初のステップでは、DNA二重らせんの2本鎖DNAを高温下で変性させ、1本鎖DNAに物理的に分離する。変性が起こる温度は、DNAの塩基構成および長さ(塩基数)によって異なり、一般に長いDNAほど温度を高くする必要がある。
  2. 次に、この1本鎖DNAを含む溶液を冷却して、プライマーを一本鎖DNAの相補配列部位に結合させることで、部分的に2本鎖を作らせる(アニーリング)。冷却が急速であると、長いDNA同士では再結合して2本鎖になることは難しいが、短いDNA断片(オリゴヌクレオチド)は容易に結合できることを利用している。この結果、対象とする長い1本鎖DNAの一部にプライマーが結合したものができる。プライマーをDNAよりも圧倒的に多い状況にしておくことで、DNAとプライマーが結合する傾向はDNAとDNAが結合する傾向よりも、さらに優越的になる。
  3. 次に、溶液を若干加熱して、この2本鎖DNA部位をテンプレートとしてDNAポリメラーゼを働かせることで、プライマーが結合した部分を起点として、遊離ヌクレオチドを利用して1本鎖部分と相補的なDNAが酵素的に合成される。DNAが合成された後、再び高温にして最初のステップに戻り、このサイクルを最初のDNA変性から繰り返すことにより増幅をすすめる。PCR反応が進むことで、生成されたDNA自体が複製のテンプレートとして使用され、元のDNAテンプレートが指数関数的に増幅される連鎖反応が進む。

以上のようにPCR法は、DNA鎖長による変性とアニーリングの進行速度の違いを利用して、反応溶液の温度の上下を繰り返すだけでDNA合成を繰り返し、任意のDNAの部分領域を増幅する技術である。

使用するDNAポリメラーゼが熱に弱い場合、変性ステップの高温下でDNAとともにポリメラーゼも変性してしまい、失活してしまう。そのためPCR法の開発当初は、DNA変性時の毎回にDNAポリメラーゼを酵素として追加しており、手間と費用がかかっていた[8]。現在では、サーマスアクアティカスという好熱菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼであるTaqポリメラーゼなどを用いることで、途中で酵素の追加をせずに反応を連続して進めることができる。


PCRサイクル

  1. 反応液を94°C程度に加熱し、30秒から1分間温度を保ち、2本鎖DNAを1本鎖に分かれさせる(図①)。
  2. 60°C程度(プライマーによって若干異なる)にまで急速冷却し、その1本鎖DNAとプライマーをアニーリングさせる(図②)。
  3. プライマーの分離がおきずDNAポリメラーゼの活性に至適な温度帯まで、再び加熱する。実験目的により、その温度は60–72°C程度に設定される。DNAが合成されるのに必要な時間、増幅する長さによるが通常1〜2分、この温度を保つ(図③)。
  4. ここまでが1つのサイクルで、以後、①から③までの手順を繰り返していく事で特定のDNA断片を増幅させる。


①誤り 2本鎖DNAの水素結合を切断して

②誤り 温度をあげすぎると1本鎖DNAに対してプライマーが結合しにくくなる。
     (参考)PCRによる診断のためのプライマー情報

③誤り 増幅したいDNA配列が長くなるにつれて伸長反応時間は長くなる。

④正しい

⑤誤り プライマーの塩基配列は当然含まれる。





5群 環境・エネルギー・技術に関するもの

          R02年 基礎科目問題(日本技術士会)           トップに戻る



Ⅰ-5-1 プラスチックごみ問題

解答:②

(ア)正しい 

マイクロプラスチック(Wikipedia)
マイクロプラスチック: microplastics)は、(生物物理学的)環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境において極めて大きな問題になっている[1]。一部の海洋研究者は1 mmよりも小さい顕微鏡サイズの全てのプラスチック粒子[2]と定義しているが、現場での採取に一般に使用されるニューストンネットのメッシュサイズが333 μm (0.333 mm) であることを認識していながら[3]、5 mmよりも小さい粒子と定義している研究者もいる[4][5]

日本の環境省はサイズが5mm以下の微細なプラスチックごみと定義している。

(イ)誤り

プラスチックを取り巻く国内外の状況 環境省(平成30年8月)
     

(ウ)誤り

問題文のどこが間違いであるかを検証していきましょう。

中国が廃プラスチック等の輸入禁止措置を行う直前の2017年   これは正しいです。
 中国 2017年7月 「輸入廃棄物管理目録」を改正 2018年1月より生活由来の廃プラスチックや未分別の紙くずや繊維くずなどの資源ごみが中国へ輸出できなくなった。

2017年に日本国内で約900万トンの廃プラスチックが排出され  これも正しいです(下図参照)

そのうち約250万トンがリサイクルされている  これも正しいです(下図参照)
 マテリアルリサイクル211万トン+ケミカルリサイクル40万トン=251万トンのリサイクル

海外に輸出され海外でリサイクルされたものは250万トンの半数以下であった  誤りがあるとするとこの部分(下図参照)
 輸出129万トンはリサイクル251万トンの51.4%>50%
 輸出されたものすべてが海外でリサイクルされたとは限らない。

これが誤りであるとの判断はなかなかに難しいと思います。
解答の選択肢①~⑤において、(ア)が正しく、(イ)が誤りであるとするものは②のみですから、(ウ)の正誤判定ができなくても正解に至ることはできそうです。


プラスチックの天然資源採掘、生産、リサイクル、廃棄の流れ(2017年推計値)

このサイトには、生産から廃棄、そしてリサイクルまでの一連の流れが記されています。その中より、今の問題に関連がある部分を抜き出しました。
     


(エ)正しい

「プラスチック資源循環戦略」の策定について(環境省、2019年5月31日)

(オ)正しい

海洋プラスチック問題について(WWF、2018年10月26日)
 問題になっている海洋プラスチックの8割以上は、陸上で発生し海に流入したもの。特に多いのが、使い捨て用が中心の「容器包装用等」。この用途に使われるプラスチックは、世界全体のプラスチック生産量の36%、世界で発生するプラスチックごみの47%を占めていると考えられます。



Ⅰ-5-2 生物多様性の保全

解答:③

③誤り

「基礎科目問題を極める」 pp348~349(H28-1-5-2に同じ)

移入種問題は、生物多様性の保全上、最も重要な課題の1つとされているが、我が国では移入種の駆除の対策は禁止されていない。 琵琶湖の外来魚と溜池の外来亀、その他、ヌートリアやアライグマなど、計画的な駆除が実施されています。

 (参考)
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律

日本在来の生物を捕食したり、これらと競合したりして、生態系を損ねたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えたりする、あるいはそうするおそれのある外来生物による被害を防止するために、それらを「特定外来生物」等として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入等について規制を行うとともに、必要に応じて国や自治体が野外等の外来生物の防除を行うことを定める。



Ⅰ-5-3 日本のエネルギー消費 

解答:④

①正しい

エネルギー白書2020 より

     

②正しい

上図参照


③正しい

エネルギー白書2020 より
     


④誤り

①で示した図を参照


⑤正しい

常識的に判断



Ⅰ-5-4 日本のエネルギー情勢 

解答:①

「基礎科目問題を極める」 pp311~312(H24-1-5-3に同じ)

解答を問題文にはめ込み、内容を確認ください。



Ⅰ-5-5 日本の産業技術発展の歴史

解答:④

④誤り

統計的品質管理法が我が国に取り入れられたのは第二次世界大戦後です。


科学的管理法(Wikipedia) より

テイラーの主張した科学的管理法の原理は、課業管理、作業の標準化、作業管理のために最適な組織形態3つである。
作業の標準化は時間研究と動作研究よりなる。

時間研究
 生産工程における標準的作業時間を設定し、これに基づいて1日の課業を決定するための研究
動作研究
 作業に使う工具や手順などの標準化のための研究 テイラーは、生産工程における作業を「要素動作」と呼ばれる細かい動作に分解し、その各動作にかかる時間をストップウオッチを用いて計測して標準的作業時間を算出する「時間研究」を考案した。優れた労働者を対象に時間研究を行って、課業管理を行った。

統計的品質管理の歴史(日科技連)
 1931年にアメリカのベル電話研究所のシューハート(W.A.Shewhart)は、統計学を基礎にした管理図を提唱しました。これが統計的品質管理の始まりといわれています。
 わが国では、1950年代初期まで、メイド・イン・ジャパンは安かろう・悪かろうという粗悪品の代名詞であり、製品の品質向上が多くの企業にとって課題でした。そこで日本科学技術連盟(日科技連)は、1950年にアメリカよりデミング博士(W.E.Deming)を招聘し、管理図や抜取検査などの統計的手法についてセミナーで講義いただきました。




Ⅰ-5-6 科学技術史

解答:①

「基礎科目問題を極める」 p367にほぼ同じ問題。

ジェンナーによる種痘法の開発(1798年)は初登場である。

キュリー夫妻、ショックレー等、メンデレーエフ、フォレストがわかっていればこの問題には正解できる。

物理(力学)→電気→生物→化学および原子・電子と技術は発展していきます。


参考までに、「基礎科目問題を極める」 pp364~365より

物理          1608年  ガリレイ        天体望遠鏡で天体観測 

物理          1656年  ホイヘンス     振り子時計を発明

物理          1705年  ハレー            周期彗星の発見 

物理          1712年  ニューコメン  大気圧機関の発明

電気      1752年  フランクリン  雷の電気的性質の解明

物理          1771年  アークライト  水力紡績機を発明

物理          1776年  ワット          ワット式蒸気機関発明

電気      1800年  ボルタ          異種金属電池の発明

電気      1822年  バベッジ    コンピュータ原型を試作

生物   1859年  ダーウィン、ウォーレス           

進化の自然選択説提唱

電気      1864年  マックスウェル 電磁場の方程式

生物   1865年  メンデル      遺伝の法則

化学  1869年  メンデレーフ  元素の周期律の発表

電気    1876年  ベル                電話の発明

化学  1879年  イーストマン  

写真用フィルム乾板を発明

電気    1880年  エジソン      発電機の発明

原子 1895年  レントゲン   X線の発見

原子 1896年  ベクレル      ウランの放射線を発見

原子 1897年  ウィルソン     霧箱の発明

原子 1898年  キュリー夫妻  

ラジウム及びポロニウムの発見

物理     1903年  ライト兄弟   人類初の動力飛行に成功

電子 1906年  フォレスト     三極真空管の発明

化学  1908年  ハーバー    アンモニア合成を確立

物理     1916年  アインシュタイン 一般相対性理論提唱

生物   1921年  フレミング   リゾチームの発見

生物   1928年  フレミング   ペニシリンの発見

化学  1935年  カローザス     ナイロンの発明

原子 1938年  ハーン            原子核分裂の発見

原子 1942年  フェルミ

原子核分裂の連鎖反応制御に成功

原子 1952年  福井謙一     

フロンティア電子理論の提唱

    電子1956年     ブラッテン     トランジスタの発明





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