385. ビジョナリー・カンパニー3 優良企業の衰退の原因とその復活策 日本国にあてはめてみると、さて・・

 2010年10月 7日掲載  2014年 5月 5日再掲


ノーベル化学賞受賞と久しぶりに明るいニュースが日本を包み込みました。しかし、受賞の対象となった研究ははるか以前になされたものです。この受賞が今の日本の実力を表していると認識してしまうと、それは大きな誤解となります。

下に引用しましたのは、日経ビジネスに紹介されていた、優良企業が衰退していく5段階です。その衰退への第一歩は「成功から生まれる傲慢」となっています。傲慢と言わないまでも、成功により企業内に安心感が漂い、それまでの緊迫した社内の雰囲気が緩み、その結果仕事に対する取り組み姿勢に変化が現れることは容易に想像ができます。

一流を目指す社員の姿勢に変化が現れ、新製品に懸ける研究開発への心構えやその質の低下。そして、その結果として、新製品の品質や商品価値の低下が顕在化してくることは容易に想像できます。

かつて、日本は日本株式会社ともいわれ「米国に追い付け、追い越せ」を合言葉に頑張ってきました。そして、「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」といわれるようになったのですが、その直後に失速したことはまだ鮮明に記憶されていることでしょう。

やはり、おれたちは、私たちは出来るんだ、ここまでやったんだ。米国なんか問題外だ。という思い込みによる傲慢と、あるステージに達したという安心感。これが、日本の今日につながっていったのだと考えられます。「ビジョナリー・カンパニー3」と会社を扱った書ですが、ビジョナリー・カントリーと国家にも同じことが言えるのではないでしょうか。

本書は、「リスクと問題の否認」(気がつかないこと、無知が問題かもしれないが)、そして「一発逆転策の追及」へと続いていきます。地道に、知力を結集してがんばるより生き残る方法はないと思うのですが。

日経ビジネスには、解決策も要約されています。この解決策を「衰退の5段階」を正確に分析しながら日本国に当てはめると、そして高度成長時代の働きアリと言われた日本の姿を重ね合わせると、そこに日本国の、そして日本人の選択すべき道が浮かび上がってくるように思います。

眼を隣国・中国に向けると、中国はまさに今「成功から生まれる傲慢」の段階です。外から冷静な目で見るとその姿ははっきりと見えるものです。日本にとっては再びビジョナリー・カントリーに返り咲くチャンスがここにあるのではないでしょうか。

本書、ビジョナリー・カンパニー3の要約は、日経ビジネスが見事にしてくれています。これだけのインフォーメーションがあれば本書を読む必要もないのではと思います。問題は知力。戦略と戦術を考える能力です。まずは政府に期待するところが大ですが。




日経ビジネス 10月4日

日本版ビジョナリーカンパニー 衰退に抗う不沈企業


 『ビジョナリー・カンパニー3』では、企業の衰退を5段階に表現しました。

1 成功から生まれる傲慢

2 規律なき拡大路線

3 リスクと問題の否認

4 一発逆転策の追求

5 屈服と凡庸な企業への転落か、消滅


 どうです。ドキっとしませんか?
 うちの会社は、この段階じゃないか、と愕然としませんか?


いったん衰退のスパイラルに入ったら、一発逆転の奇手はあり得ないこと。解は必ず社内にあること。人材もまずは社内に求めるべきこと。そして何より、改めて自分の会社が社会にとってどんな存在意義があるのか、考え抜いて再確認すること。

 つまり、危機を脱するためには、抜け道も近道もないこと。その代わり、自分の会社、自分の顧客、自分の社員と向き合い、徹底的に考えることでのみ、光明は見えてくる。

 それが結論です。




文書リストに戻る ホームに戻る