342. 押していい捨て印、押してはいけない捨て印  委任状への捨印は絶対に避けるべきと

 2010年 6月18日掲載  2014年 5月 5日再掲


普通の生活を送っていると、捨印などを押す機会はそうそうないが、下の文書よりわかるように、捨印を押したために文書を自由に改ざんされても文句が言えない。文句を言うときは裁判を起こす時となる。

捨印は押さずに、訂正個所が発生するたびに訂正印を押すことが一番安全な方法のようであるが、この方法では事務手続きに時間を要する結果となる場合もあるだろう。

結局は、事案と相手を見て決めるより仕方がないというのが結論か?



押していい捨て印、押してはいけない捨て印
契約書の訂正
プレジデント 2010年5.3号
どうしてこんな場所に印鑑を押さなければならないのかと思った経験はないだろうか。

社会生活を送るうえで、様々な申込書や契約書に印鑑を押す機会は少なくない。その際、どうしてこんな場所に印鑑を押さなければならないのかと思った経験はないだろうか。例えば「捨て印」と呼ばれるもの。当事者氏名に添えて押した印鑑を、その書面の隅などにも押印する場合を指す。

一般に捨て印で修正できるとされる範囲企業法務などに詳しい、リーバマン法律事務所の石井邦尚弁護士は、「捨て印」の意味についてこう説明する。

「捨て印とは、その書面に関して、ある程度まで訂正して構わないという権限を与える趣旨で押す印鑑のこと。もっとも、その趣旨を知らずに捨て印を押す人もいるだろうが、もし争いが裁判所に持ちこまれれば、国内の取引慣習などを前提に、やはり書面の訂正を容認する意思が表示されていると解釈される可能性が高いだろう」

つまり、捨て印は、書面の内容に誤りがあって書き直すときに、訂正印として流用することができるのである。

しかし、捨て印を押したために、相手が好き勝手に契約内容を改変できるとすればたまったものではない。訂正権限を譲り渡したと推定される印鑑を押すことは、まるで白紙の契約書を差し入れるのと同じぐらい危険な行為ではないだろうか。

「とはいえ、捨て印で、どんな訂正でも可能となるわけではない。一般的には、捨て印が押されているからといって、契約内容の重要な部分についてまで、変更する権限を与えているとは解釈されないであろう。裏を返せば、漢字などの明らかな書き間違いは、捨て印をもって修正できる」(石井弁護士)



捨印(Wikipedia)

本来は、微細な誤記、あるいは明らかな誤字脱字程度の訂正を認める趣旨で押されるものだが、訂正の範囲や限度は限定されていない。よって、授受する金銭の金額を書き換えたり、文書の記載内容の趣旨を当事者の一方にとって都合の良いように変更するなどの書換えをされても、それらを全て事前承認したと扱われる危険がある。言うなれば、文書の記載内容を修正する全権を相手に渡すようなものとも考えられる。

実務上、委任状などに捨印を押す場合があるが、これはいわゆる白紙委任状と同じ事であり絶対に避けるべき事柄である。




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