298. 3万年前に絶滅したネアンデルタール人のDNAは現代人の中に生きていた

 2010年 5月 7日掲載  2014年 4月28日再掲


近年、日本の技術をしてガラパゴス化と言われることがある。ガラパゴス化(がらぱごすか:Galápagos Syndrome)とは、生物の世界でいうガラパゴス諸島における現象のように、技術やサービスなどが日本市場で独自の進化を遂げて世界標準から掛け離れてしまう現象のことである。転じてジャラパゴス・シンドローム(Jalápagos Syndrome)とも呼ばれる。

本家のガラパゴス諸島では複数の離島よりなり、それぞれの島ごとに生物が独自進化したことがダーウィンにより明らかにされた。そのガラパゴスで、最近、陸イグアナ(最初の種)と海イグアナ(陸イグアナから派生した種)が交雑し、サボテンの樹にのぼれる交雑種が勢力を伸ばしてきているとの報告がある。

星新一のメタモルフォセス群島を思い出した。存在するありとあらゆるものが交雑をする不思議な世界である。

種は、ただただ分裂を繰り返すだけではなく、分裂した者同士が交雑し、新しい種を創るとの証左である。

ヒトもまた同じであるようだ。3万年前に滅びたとされるネアンデルタール人が実は現代人類と交雑して、そのDNAを現在に残しているとの報告がなされた。この報告によると、このDNAはヨーロッパに近い人種に多く残こっている。ヨーロッパ人がっちりとした体格、の白い肌、堀の深い顔、その特徴の一部はネアンデルタール人から引き継いだものかもしれない。

読売新聞の記事には人類の系統図が記されている。この図で面白いのは、ヨーロッパと西アジアの人類にはネアンデルタールの血が混じっているとされるが、人類発祥の地であるアフリカにはこの血が混じっていないことである。

進化とは面白いものである。これからもびっくりするような発見が続くことと思う。




読売新聞 5月7日

絶滅したネアンデルタール人、現生人類と交雑



 現代の人間とは別種のネアンデルタール人が、初期の人間と交雑していたとの研究結果を米独の研究チームが7日付の米科学誌サイエンスに発表する。

 ネアンデルタール人はこれまで、現生人類(ホモ・サピエンス)との生存競争に敗れ絶滅に追い込まれたと考えられてきたが、実際には現生人類と交流し、その遺伝子は現生人類に受け継がれていたことになる。アフリカ以外の地域の現代人のゲノム(全遺伝情報)のうち1~4%がネアンデルタール人に由来するという。

 独マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授らは、現在のクロアチアで3万8000年以上前に生きていたネアンデルタール人女性3人らの化石から、骨粉400ミリ・グラムを採取した。死後に侵入した細菌などのDNAをより分け、現代人のDNAが紛れ込まないよう注意しながら、4年がかりでネアンデルタール人のゲノム配列の6割を再現した。

 これを世界各地の現代人5人のゲノムと比較したところ、欧州やアジア人の方が、アフリカ人よりわずかにネアンデルタール人との共通部分が多かった。現生人類が故郷のアフリカを出て間もない10万~5万年前、中東などの地域で先住民のネアンデルタール人と出会って交雑し、その後に現生人類が世界中に進出したため、アフリカ以外の各地でネアンデルタール人の遺伝子が検出されたと、研究チームは推定している。

 斎藤成也・国立遺伝学研究所教授(人類進化学)の話「意義深い研究成果。ネアンデルタール人と同時代に同じ地域に生きていた欧州系だけでなく、日本人を含むアジア人にも遺伝子が受け継がれたとすれば驚きだ」

 ◆ネアンデルタール人=現生人類に最も近い人類で、40万~30万年前に現生人類との共通祖先から枝分かれした。3万年前に絶滅するまで、欧州と西アジアに分布。現代人より顔の彫りが深く、頑丈な体格をしていた。日照が少ない高緯度地方のため肌は白く髪の色も薄かったとみられる。




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