277. 中小企業経営者はあきらめず、くじけず、社員とその家族を守る そのために血液である運転資金を調達する

 2010年 4月27日掲載  2014年 4月28日再掲


「超現場主義中小企業金融論 役人、学者、銀行員・・エリートにはわかるまい!(2006年6月)」 これは平将明(たいらまさあき)氏が著わした書籍の題名である。

平氏は小泉チルドレンとして衆議院選挙で当選し、今も現職である。しかし、議員となる前に父から引き継いだ中小企業の立て直しに奔走し、その時の銀行の対応への不満と疑問より新しい銀行「日本振興銀行」を興す決意をする。

さて、中小企業は一般的に自己資本比率や内部留保が低く、銀行から金を借りながら自転車操業をしているところが多い。情勢の変化により銀行からの借入金が止まるとパタリと倒産することも少なくない。期所に金を借り、期末に借りた金を返す、あるいは、月初に金を借り月末に金を返すなど(べた貸し)、企業の血液としての金が常に中小企業と銀行の間を行き来しているわけである。この血液である金が銀行の貸しはがしに遭い、金の流れが止まると即倒産という事態もあり得る。

銀行側からみた中小企業の格付けは、
1.業務が良好で、財務内容にも問題ない「正常先」
2.延滞債務や貸出債務緩和条件がある「要注意先」
3.現状は経営破綻の状況にはないが、今後経営破綻の状況に陥る可能性の高い「破綻懸念先」
4.法的・形式的には経営破綻はしていないが、実質的には経営破綻に陥っている「実質破綻先」
5.法的・形式的に破綻している「破綻先」

このなかで、2や3などは銀行が融資を継続しさえすれば良い会社に生まれ変わる可能性があるものも多く含まれる。たとえば、優良な顧客を獲得し事業を拡大している会社などは、その事業規模の拡大速度が速いと資金ショートに陥るケースがある。いわゆる「そろばん合って銭足らず」の状況である。

本書の著者の会社もまさにこのような状況に陥り、著者は金融に奔走した。その時に、頼みの綱の銀行は全行、判をついたように過去3年間の財務諸表をもとに審査し、結局は赤字決算を理由に融資をしてくれる銀行はなかった。中小企業の現在と未来を見つめることができる「目利きのきく」銀行かがいないことに著者は落胆した。

そしてもう一つは注目すべきは銀行利率である。銀行や信用金庫の貸出金利と、商工ローンの貸出金利があまりにも開いている。本書が発行された時点で前者が年利2〜5%、後者が年利20〜25%である。そして当時はこの中間の金利で資金を提供する銀行はなかった。

資金の提供さえあれば優良な企業に成長でき、その結果多くの雇用が生まれその家族が守られる。その思いで著者は中小企業者を対象とした目利きのきく銀行、日本振興銀行の設立に奔走し、それを成し遂げた。この銀行は多くの中小企業者とその従業員、ひいては日本の技術を守るために寄与している。


さて、この著者の本当に言いたかったこと、これは次の言葉ではないかと思う。

中小企業の経営者は「人のせいにしない」、何があっても「逃げない」、だから「あきらめない」し、「くじけない」。

就学した子どもたちの中から「ひきこもり」が生まれたり、学校を卒業しても就業の意志さえ持たないニートが出てくる。その数は年々増加し大きな社会問題となっている。
こうした子どもたちの問題の一番の原因は「逃げる」という習性にある。
だから、逃げないことの格好よさ、くじけない生き方というものを子どもたちに教えていく必要がある。


苦難を乗り越え、未来を切り開いてきた、そして今も未来を見つめる著者の言葉である。




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