272. ピロリ菌に感染していると60歳以上では胃の変形が認められ、悪性腫瘍へと変化する可能性が

 2010年 4月25日掲載  2014年 4月28日再掲


ピロリ菌が胃潰瘍やがんの原因になることが知られてから久しいが、どれほど健康に害を与える菌であるかの認識は薄いように感じられる。事実、私の会社の健康診断でもピロリ菌有無の確認はなされないし、胃検診において問題が発見された場合にもその後の精密検査でピロリ菌に言及されることはないと聞く。

一方、下に引用した研究報告を見るとピロリ菌の健康への影響は顕著である。まず、ピロリ菌に感染している60歳以上では胃に変形(委縮性胃炎)が認められること、また、びらん・潰瘍、ATP(異型上皮)、胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、悪性腫瘍にも大きく関連している。

なかなか衝撃的な研究報告である。

ピロリ菌有無の確認は簡単である。直接に胃を観察しサンプルを採って確認する方法、血液を採取しピロリ菌(高原)によって生じた血清中の抗体を確認する方法、そして炭素同位体を含む尿素の代謝を利用する尿素呼気法がある。

下のレポートによると、3人に2人は感染しており、年齢が若くても安心はできない。逆に若い年齢で感染していると、加齢に従いその危険性は増加していくともいえる。早い機会に検査しておいた方がよいようである。



大同生命厚生事業団

http://www.daido-life-welfare.or.jp/research_papers/19/welfare_8.pdf

血清ヘリコバクタ−ピロリ菌抗体測定の意義
−胃癌検診受診率の向上を目指して−

(背景)ピロリ菌は胃癌発生の温床となる萎縮性胃炎を惹起することが証明されており、萎縮性胃炎の診断が早期胃癌の発見に重要と考えられる。そこで、我々は血清ピロリ菌IgG 抗体(以下ピロリ抗体)とピロリ菌感染の有無萎縮性胃炎の有無、および胃粘膜病変の有無の関係について検討し、胃癌検診におけるピロリ抗体測定の意義を考察した。


(目的)茨城県南地区における胃癌検診受診率の向上を図るため、ヘリコバクターピロリ菌の感染の指標となる血清ヘリコバクターピロリ菌抗体価と胃病変との関連性を検討することにより、地域住民への胃癌危険因子としてのピロリ菌感染の重要性を明示し、胃癌検診受診を促す仕組みを確立する。

(対象および方法)人間ドックあるいは外来を受診し、血清ピロリ菌IgG 抗体を測定した80 名。60 歳未満が27 名(男:14、女:13)、60 歳以上が53 名(男:27、女:26)。ピロリ菌の有無は生検法あるいは尿素呼気試験法により診断した。ピロリ抗体測定は特殊免疫研究所のイムニスピロリ抗体EIA キットにより行い、10 u/ml 以上を陽性とした。

(結果)ピロリ菌抗体陽性は52 例(65%)、陰性は28 例(35%)であった。ピロリ菌検索をなし得たのは抗体陽性例の49 例、陰性例の27 例であり、ピロリ菌の陽性率はそれぞれ76%、26%を示し、抗体および菌の陽性率の間に有意な相関が認められた(P<0.0001)(表1)。ピロリ菌抗体と萎縮性胃炎の関係を年齢別に検討すると、60 歳未満では抗体陽性14 例中6例(43%)が未だ萎縮性胃炎を呈していないのに対し、60 歳以上では38 例中36 例(95%)が既に萎縮性胃炎を呈していた(表2)。更にピロリ菌抗体と胃粘膜病変との関連性をみると、びらん・潰瘍、ATP(異型上皮)、胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、悪性腫瘍は、それぞれ抗体陽性例の69%、0%、35%、64%、100%に認められ</span  以下略

(結論)ピロリ菌抗体陽性は、ピロリ菌感染と有意に相関していた。60 歳以上ではピロリ抗体陽性例の大部分が萎縮性胃炎を呈しており、腫瘍性病変はピロリ抗体陽性例に多くみられる傾向があった。







文書リストに戻る ホームに戻る