216. さよなら、トラック物流 鉄道へのモーダルシフトは進むか? その前提としての物流新幹線構想とは

 2010年 1月 5日掲載  2014年 4月15日再掲


日経ビジネスオンライン 1月5日より部分引用

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091231/211947/

「モーダルシフト」という言葉をご存じだろうか。輸送モードの切り替えという意味で、一般的にはトラック輸送を船舶輸送や鉄道輸送に変更しようとする動きを指す。

 国交省の資料によると1トンの荷物を1キロメートル運ぶのに排出するCO2(二酸化炭素)の量は、トラックが153グラムであるのに対し、船舶は38グラム、鉄道は21グラムだという。

もともと船舶輸送はリードタイムが長いうえ、気象によって運行が左右されるため、条件に見合う荷物が限られている。また、出荷場所から港までと、港から届け先までの輸送はトラックに頼らざるを得ない。

ダイヤの問題さえ解決できれば、鉄道へのモーダルシフトは大きく進む可能性がある。その突破口として「物流新幹線」構想がにわかに浮上している。

 現在建設中の高速道路、新東名・新名神の中央分離帯を利用して、東京〜大阪間に貨物専用の新幹線を走らせようというアイデアだ。

 交通論を専門とする中村英夫・東京都市大学学長を座長に2008年2月に発足した「東海道物流新幹線構想委員会」が2009年12月に同構想を発表した。

 物流新幹線の平均時速は90〜100キロで、東京〜大阪間を6時間30分で結ぶ。自動運転・無人運転システムを導入し、荷主のニーズに応じて柔軟にダイヤを組む。

 列車編成は5両1ユニットを複数連結して最大25両程度。3大都市間で1日当たり最大20万トンを輸送する。これはJR貨物の1日当たり平均輸送量(全国)の2倍以上に当たる。

 構想が実現すれば10トン車2万台分の荷物が鉄道輸送に切り替わる。高速道路からトラックの姿が消える。その結果、年間約300万トンのCO2排出量が削減される。

 その経済効果は30年間で約4兆円と試算されている。それに対し建設費は、高速道路の分離帯や用地を買収済みで使用目的の決まっていない車線を利用するため、約2兆円で済むという。

 日本政府が本気で物流の環境負荷低減を目指すのなら、鉄道へのモーダルシフトによって“脱エンジン”に舵を切るほか有効な手段は見当たらない。


(参考)社会実情データ図録より








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