155. 「素数ゼミ」の謎が日本人研究者の執念により解明された コンピュータ・シミュレーションの勝利

 2009年 5月30日掲載  2014年 3月 2日再掲


北米に13年ゼミや17年ゼミがいて、それらのセミが羽化する年にはニュースとなる。無数のセミが一斉に鳴くため会話ができないくらいうるさいらしい。銃をぶっ放して追い払いにかかる輩もいるとか。

日本人なら
  閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声  松尾芭蕉
と虫の鳴き声を自然の一部としてとらえますが、西欧人にはそれは音(騒音)としてとらえられるようです。そのセミが一斉に鳴くのですからまさに騒音でしょう。

このセミに関しては数年前に「素数ゼミの謎(下記書籍参照)」が発行され、なるほどとうまく説明されていますので、謎はすでに解明されていると思っていました。

それが今回のこのニュースです。いままでの仮説に加えて、自然界にみられる「種の個体数が一定の数を割り込むと、一気に絶滅に向かう」という条件を付け加えてコンピュータ・シミュレーションを行うと、その計算結果が現実と一致したということです。コンピュータ・シミュレーションは自然界の事象の、裏に潜む真理を解明する上で強力な武器となります。

ただ、日本の蝉は7年ゼミです。これも素数といえば素数ですが、毎年一定数が羽化するので、北米の素数ゼミとは意味合いが違います。

なお、下に示した書籍は両方とも静岡大学の吉村仁教授によるもので、今回シミュレーションに成功したのも吉村仁教授です。研究者は常にナゼを持ち続け、執念深く追い続けています。今回のシミュレーションですべての謎は解決したのでしょうか? 日本のセミがなぜ7年ゼミのみなのか、解き明かしていただきたいものです。


日本経済新聞 5月25日より引用




書籍 素数ゼミの謎
1章 アメリカの奇妙なセミ(不思議な生き物、セミ;50億匹のセミ!?)
2章 小さなセミの秘密(アメリカ中がセミだらけ?;謎を解くカギは「気温」?;とてつもない時代「氷河時代」)
3章 セミの歴史を追って(祖先ゼミの受難;不幸中の幸い「レフュージア」;奇妙な性質のはじまり)
4章 素数ゼミの登場(13と17の秘密;「素数ゼミ」の登場;魔法の数字の不思議)
5章 そして、現代へ(長い旅の末に;終わりに―「進化」ってなんだろう)

書籍 17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る!
プロローグ セミの大発生に街は大騒ぎ!
第1章 日本のセミと素数ゼミの違い
第2章 素数ゼミの秘密に迫る!第3章 素数ゼミを追って!
第4章 素数ゼミの謎はどこまで明らかになったか
第5章 進化の歴史とムシの多様性
第6章 メスの「オス選び」と種分化の歴史
第7章 素数ゼミの秘密はどうして解けたのか




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