81. 天使のサイクルと悪魔のサイクル

 2009年 2月18日掲載  2014年 1月18日再掲


世の中、うまく回り始めると弾みがついて物事がますますうまくいくようになる。逆にいったん躓くと、それがもとで何をやってもうまくいかない。これを端的に表す言葉として「天使のサイクル」、「悪魔のサイクル」がある。

これはマネジメントサイクル(PDCAサイクル)をイメージしてもらうと分かりやすい。より高い目標値の計画に対してその通りの結果が得られた。あるいは、計画値よりも良い結果が得られた。これに自信を得て、次の期も高い目標を設定したが、またそれを実現することができた。これが「天使のサイクル」(スパイラルアップ・サイクル)である。

「天使のサイクル」は偶然に達成されるものではない。景気が追い風となって売り上げや利益が増加することはあるかもしれないが、景気にだけ頼っていると不況になったとき(向かい風が吹いた時)には「悪魔のサイクル」(スパイラルダウン・サイクル)に陥ることを避けることができなくなる。

「天使のサイクル」を形作るためには、
  経営者の卓越した経営手腕
  妥当かつ魅力的な経営戦略
  経営戦略の具体的な戦術化
  戦略・戦術にあう組織づくり
  活力ある企業風土の醸成
  社員のベクトルを同じ方向へ
  個々の社員の能力を強化
などが求められる。

「天使のサイクル」に入っていると安心していると、ただ景気上昇の波に乗っていただけで、気がつけば波の下降と一緒に企業業績も下っているということもあり得る。設備投資の時期は企業判断としては重要な項目となる。得てして景気の良い時には設備化のための金額が高くつき、その設備が景気の低迷で売り上げや利益に寄与しないとなると、減価償却もできない惨状が訪れる。「カネ」を「モノ」に換えて利益(カネ)を生み出させるタイミングを図ることは難しい。

一方、「カネ」を「ヒト」につぎ込むと、つぎ込んだだけのものは残る。教育投資である。「企業は人なり」とは言い古された言葉ではあるが真実である。「ヒト」の経験や頭脳によってその企業の進む道や業績が方向づけられ、存続し発展していく。

「ヒト」にどれだけの経営資源を振り向けるか。また、その振り向けた経営資源を如何に有効に社業に役立たせるか。経営者の腕の見せ所である。

社員に規律を与え、守らせるべきものは守らせ、その一方で、社員に仕事を改良するための機会や、社風を高めるための行動の自由を与える。厳しさの中にも自由闊達である、そんな社風が「天使のサイクル」を形作っていくのではないだろうか。

求めている主題は「企業風土と社員の幸せ」である。企業が一見やさしいように見えても、結局は生ぬるくて社員の成長を促さず、気がつけば年齢だけを重ねてしまった、あるいは気がつけば結果的にとんでもない事件に巻き込まれていた。これでは「社員の幸せ」は担保されない。厳しさの中にも愛情がある企業。人と人とが自由闊達に切磋琢磨し合える企業。各人が企業と社会に責任を持ち、その一方ではプライドを持てる、そのような企業が理想であり、21世紀にはそのような企業でなければ生き残っていけないのではなかろうか。


体系的製品安全マネジメントプログラム(三菱総合研究所)より




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