20. 博士号の取り方と博士号取得者数   その取得者数は年々増え続けている

 2007年 5月22日掲載  2014年 1月10日再掲

 私が学生だったウン十年前は、博士号と聞くと非常に権威があるものだと思っていた。その理由のひとつに、理科系の大学院に席を置くドクター(課程博士、あるいはコースドクター)は3年間という限られた期間に、7報程度以上の論文を英文雑誌に投稿することが博士号取得の前提条件となっていたからである。この条件を満たして、3年間で無事に博士号を手にできた人は2人に1人くらいであった。博士課程に進む人は少なく、博士は希少な存在であった。

 ところが最近は日本でもウン十年前のアメリカと同様に、非常に多くの人が博士号を取得するようになった。これは、日本の社会でも高学歴化が進んだのと同時に、多くの大学に博士課程が設けられたことが要因であろう。日本とアメリカを比較した場合(下表)、1.日本では医・歯・薬・保険博士が際立って多く、不思議なことにこの分野の修士(マスター)の数を超えている(他の学部から医学部や薬学部に人材が流入した)、2.人文・芸術、法・経等、理学、教育・教員養成分野の知や哲学を扱う部分での博士号取得者がアメリカに比べ少ない結果となっている。教育・教員養成はまさに今問題になっているところである。
※ 表中で博士(甲種)はコースドクターであることを示している。これとは別に、大学に論文を提出し、審査の結果与えられる博士号を博士(乙種)という。

 さて、博士号を取得するためには、どの程度の数の論文を投稿しなければならないか?はっきりとした統計は出ていない。これは各大学で非常にバラツキがある。1報で博士号を授与してくれる大学もあるし、最低4、5報は出さなければならない大学もある。論文の数だけで業績を評価できるものではないであろう。しかしながら、重要な研究、社会に与えるインパクトを与える成果であれば自然と論文数が増えてくるものである。やはり論文数は評価の一つの対象となるであろう。

博士号取得のし易さの傾向としては、新設の博士課程では博士号を取りやすく、旧帝大などでは審査も厳格でその入手の難易度は高くなる。そのためか、旧帝大などでは、名刺にへの記載方法を、○○大学○○博士と記載するよう指導しているところもある。最近の博士号取得者は、その記述方法が変って、博士(理学)、博士(工学)、博士(農学)などと書かなければならなくなった。アメリカで博士を表すPhD(Philosophy Doctor)から一歩後退したのではと感じている。

キーワード:博士号 取得者数 論文数 アメリカ対比 PhD
 

http://www.zam.go.jp/n00/pdf/nf001004.pdf






http://www.titech.ac.jp/publications/j/chronicle/393/393-7.html
(※再掲載時点でリンク切れ)

博士号取得のために必要な学術雑誌掲載論文数




博士号を取る時に考えること取った後できること ― 生命科学を学んだ人の人生設計

米国博士号(プロフェッサー・ドクター)をとるコツ―あなたの都合にあわせてくれる米国大学院の利用術

第1章 自分に合った大学院とは何か、の考え方
第2章 指導教官の資質
第3章 指導教官の選び方と調査の仕方
第4章 大学院の選び方
第5章 米国大学院入学試験の準備と入学のチャンスの高め方
第6章 入学する前に伸ばしておきたい知識と能力
第7章 大学院に入ったら
第8章 最後の詰め―博士論文




さらに、
2012年1月27日掲載


博士号取得における指導教官の役割は非常に重要 学生がキツネで教官が「トラ」の、持ちつ持たれつの関係 

博士号の取得においては、分野によってもその取得の困難さが違う。たとえば、医学博士は取りやすいが文学博士を取得するのはかなり難しいといった具合である。

同じ分野を選んだ時には、指導教官やその教室の文化や業績が博士号の取得のしやすさに関係してくる場合が多い。学会で権威のある先生についた場合には、テーマにも恵まれ学会発表の機会も増えて、比較的早く博士号が得られるケースが多い。

下の文章は、添付の書籍よりの引用である。ウサギが博士課程の学生、ライオンが指導教官と読み替えていただければ良いと思う。まさに「虎の威を借る狐」状態である。これが書籍「科学者として生き残る方法」に記されているのであるから、まんざら嘘でもなかろう。



(関連記事)
2007年5月22日ブログよりの博士号に関する雑感

博士号の取り方と博士号取得者数   その取得者数は年々増え続けている



書籍「科学者として生き残る方法」からの引用

森でキツネがウサギとばったり出くわした。
「おい、ちっこいの、調子はどうだい」とキツネ。
「おいら、ウサギがどうやってキツネを食うかについて、学位論文を書いているところ」とウサギ。
「おいおい、そんなこと、あるわけないだろう!」とキツネ。
「じゃあ一緒にこいよ。見せてやっるからさ」とウサギ。
二匹は、ウサギの巣穴に一緒に入ったが、しばらくすると、ウサギだけが満面の笑をたたえて出てきたとさ。
そこへオオカミがやってきた。
「ちかごろ、どうしているんだい」とオオカミ。
「おいら、ウサギがどうやってオオカミをガツガツ食うかについて、学位論文の第二章を書いているところなんだ」とウサギ。
「おいおい気でも変になったんじゃないかい。おまえの学問上の良心はどこへ逝っちまったんだよ!」とオオカミ。
「じゃあ一緒にこいよ、見せてやるからさ」とウサギ。
さて、今回も、ウサギだけが満面の笑をたたえて出てきた。しかも、前足には、学位記を持ってたとさ。
さて、カメラは一度後退し、そのままウサギの巣穴に入って、内部を映し出したわけだが、もう、みなさん、お分かりだろう。巣穴の奥には、恐ろしい顔をした巨大なライオンが鎮座していて、キツネとオオカミを食い散らかした残骸が散らばっていましたとさ。
おはなしの教訓:学位論文の中身にさして意味はない。大切なのは指導教員である。



さらに、
2007年5月22日掲載

help RSS ディプロマミル 学歴を金銭で金メッキする方法であるがその権威は長続きしない

 学位が簡単に取れますよ、というメールが良く来る。非常に短期間で、お金でアメリカの学位が買えるという。学位さえ与えられれば日本では○○博士と名刺に書ける。どこの大学で学位を取得されましたか?などと聞く人はまれである。ましてや、日本では、いや、アメリカでも○○大学○○博士と書くようなことにはなっていない。

 誰が学位(博士号)をどこでいつ取得したかを検索できるデータベースがあれば、問題は一挙に解決するのだが、個人情報保護法の関連でそうはならないと考えられる。頼みは個人の良心のみということか。明治時代には学士さまは非常に尊敬される存在であったが、今日、博士は玉石混合となっているため、平均値ではその信用が得られていないのではと感じられる。

 ディプロマミルで得た学位は、よほどうまく運用しない限り、いずれ剥げ落ち、白日のもとにさらされることになるだろう。

キーワード:学位 博士号 ディプロマミル 学歴詐称

(Wikipediaより引用)
ディプロマミル(英:diploma mill、証書工場の意)あるいはディグリーミル(英:degree mill、学位工場の意)とは、実際に就学せずとも金銭と引き換えに高等教育の「学位」を授与する(と称する)機関・組織・団体のことであり、その活動は学位商法とも呼ばれる。転じて、アメリカのスラングで、入学卒業が非常に容易な大学を皮肉をこめてこう呼ぶ。なお、このような転用がみられるのは、アメリカの大学では、入学は楽だが卒業認定は厳格なのが普通であるためである。最近ではディプロマミルは社会問題になるほど認知され、これらの機関・組織・団体の社会的影響と大学のあり方が、教育学者による研究テーマとなっている。
ディプロマミルの発行した学位を使用していた場合、軽犯罪法第1条15項(称号詐称の罪)で処罰される可能性が弁護士によって指摘されている。

参考 学歴詐称 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E6%AD%B4%E8%A9%90%E7%A7%B0



その他の情報サイト
http://blog.tatsuru.com/2007/04/05_1347.php
http://www001.upp.so-net.ne.jp/yasuaki/misc/abuse/abuse18.htm




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